読書感想文
「うたうとは 小さないのちひろいあげ」(村上しいこ)
※686字※
タイトルにひかれ手に取った1冊です。
表紙の女の子の視線が、心に突き刺さるように訴えかけてきたので読んでみることに。
主人公は高校1年生の白石桃子。
年齢が、自分の子供ほど違うのでもしかしたら感情移入しにくいのではないかと躊躇しました。
しかしそんなことは全くの杞憂で自分自身も同じようなことで悩んでいたなぁと胸がキュッとなるお話でした。
いじめで不登校になった友人・綾美の心を開かせたいのにうまくいかないもどかしさ。
綾美の心の闇を覗くのが私は怖くて、だけど桃子にも勇気を出してもらいたくて祈るような気持で読み進めていました。
ひょんなことから入部した「うた部」の先輩方やクラスメートとのかかわりの中で、二人の歯車がゆっくりと再び回り始めていきます。
うた部というのは、俳句を作る部活です。
顧問の難波江先生や先輩である、いと先輩・業平先輩たちのキャラがしっかりしていて
笑ったり、泣いたり、勇気づけられたりまるで、自分が高校生に戻ったかのようなピュアな気持ちを思い出させてくれました。
男勝りのいと先輩が、業平先輩に片思いしているシーンは、彼女を抱きしめてあげたくなるくらい可愛いです。
桃子を憎んでいた綾美が、ラストで素直に自分の気持ちを吐き出したシーンが心にとても残りました。
桃子に向けて歌った俳句が、タイトルと結びついて胸がいっぱいになります。
その空気感まで伝わるような描写に、すっかり感心させられました。
うた部での二人の活躍や、先輩たちのその後が続編になればいいのにと読み終えた後、思いました。
爽やかな読後感のある青春小説です。
不器用だけど、懸命だったあの頃を思い出させてくれました。
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