読書感想文
「神様のくれた背番号」(渡辺保裕)
※651文字※
40歳のホームレスが神様の力で天才的野球選手に生まれ変わり、40歳のオールドルーキーとして阪神タイガースに入団する物語です。
これを見た皆さまは、なんととてつもない物語だと思われるでしょう。
そう、この物語はとてつもないのです。
この物語の主人公であるケンちゃんこと飛田謙吉は、まさに野球漫画の世界の住人です。
投手としては160キロオーバーのストレートを投げ、打者としては相手の球を軽々とスタンドに打ち込みます。
はっきり言ってしまえば、この主人公はイチローと田中と前田と松井を合わせたような超人です。
つまりこの小説は超人主人公がなみいるモブを蹴散らして暴れまわる俺ツエー小説「ではない」のです。
実は主人公ケンちゃんはただの狂言回しに過ぎません。
この物語の主人公は、そんなケンちゃんに夢を見せられて救われていく、周りの名もなき(もちろん名前はありますが)人々なのです。
社会の荒波にもまれたホームレスたち、心臓に病気を抱える少年、小さな鉄工所の社長、そんな彼らがケンちゃんに途方もない幻想を見せられてもう一度立ち上がっていく、これはそんな御伽噺なのです。
この物語にはリアリティや設定の緻密さといったものはありません。
しかし、小説として、物語としてもっとも大切な何かはふんだんにあふれています。
厳しい世の中、ろくでもない世の中にげんなりした人は是非この小説を読んでください。
きっとそこには救いが待っています。
御伽噺としてみると、この「神様のくれた背番号」は10年に一度の名作です。
御伽噺が好きなら、はずせない作品だと言えます。
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