読書感想文
「坂の上の雲」(司馬遼太郎)
※1442文字※
先般年、NHK総合で数年にわたって司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」を放送していましたが、その後も、やはりNHKのBS放送で再放送をしていまして、此方は録画で何度も見ることになりました。
ただ、当時は会社勤めでナカナカ長編の本を読む機会がなく、時が過ぎ去っれしまいましたが、昨年の4月で定年退職を迎え時間に余裕も出来ました。
元より、歴史が大好きな小生で、古き良き時代を彩った神社仏閣等を訪ね、そして其れに合せるようにして、歴史書や歴史小説を読むのも好きで、勿論、司馬遼太郎の本も多数あり、「街道を往く」シリーズなどは特によく読んでいました。
ところが、「坂の上の雲」は長編歴史小説ということもあって、仕事にかまけてナカナカ読む機会が無かったのです。
そして定年退職を迎えたこともあり、更に、此の本の大河テレビが再放送されるということも重なってガッチリ本を購入し、先般になって読み終わったところなんです。
著者の司馬氏は第一巻の冒頭で、此の「坂の上の雲」の題名について次のように書いています。
「此の長い物語は、日本史上で例のないほどの明治期の幸せな楽天家達の物語である。
しかし、やがて彼らは日露戦争という途方も無い大仕事に無我夢中で首を突っ込んで往くことになる。
・・・楽天家たちは其のような時代人の体質として前のみを見つめて歩き出す。
其れは登ってゆく坂の上の青い天に若し一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば、其れのみを見つめて上ってゆくであろう」
「坂の上の雲」の本文の内容は、はやりテレビとは異なって、微細、広大にわたって其の内容や経過、其れに状況や結果が書いてあって、圧倒的に感動的にさせられたのでした。
”坂の上の雲”というのは、明治時期の日本が近代化ヘ向かうための青春の叙情詩であり、若い群像が、雲のような高所を目指して突き進んだ物語であり、結果としと当時の明治という日本の姿を写しとったもので、まさに民族の 叙事詩と呼んでもよい歴史長編小説でした。
勿論、明治時代の此の後日本がどのように世界に立ち向かって行くか、という歴史として大前提が有り、これが史実となっているところが真に面白く読めるのです。
当然のこととして、歴史小説や戦争史、あるいは当時の軍記としても勉強になるし、非常に堪能することができるのです。
「坂の上の雲」は全六巻という大長編小説ですが、物語の主要部分は戦争に突き進む世相、即ち、四国・松山の軍人秋山兄弟が戦争に突き進む状況や、一方では秋山弟(真之)の友人で、文学に明け暮れ、俳句をつくり、平和を愛する正岡子規達がが中心となって描かれてゆきます。
結局は、正岡子規は病に倒れ、早世してしまうが、戦争は容赦なく突き進んでしまうのです。
これは、平和が摘み取られ、戦争が優先してゆく日本という時代の象徴としても描かれているのではないかとも思われるのです。
小生も多くの歴史小説で長編物も数多く読んだが、其の中でも「坂の上の雲」は身近な時代の物語でも有り、小生の印象に残る人生の一冊として挙げられるでしょう。
特に現代日本は平和国家として70年以上もの長い間歩んできました。
しかしそれは、先人たち彼らの刻んだ歴史の苦難の線上を、難なく歩んでいるに過ぎないのです。
果たしてこれでよいのか、此の儘でタダ平和という感覚だけを享受してて良いものか、今は考える時期に来ているような気もします。
此のような時期にあって、是非、この「坂の上の雲」は、若い世代にどうしても読んで欲しい一冊でも有ります。
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