「朽ちていった命:被曝治療83日間の記録」(NHK「東海村臨界事故」取材班 著)の読書感想文 書き方の例文2004字
「おれはモルモットじゃない」
東海村JCO臨界事故で致死量の放射線を浴びた男性が遺した言葉です。
この延命行為は、人体実験に他ならないと思います。
おそらく彼らの治療データは医学的にかなり貴重なものになるのでしょう。
ひょっとしたら彼らが延命治療を続けたのは、政治的な判断や逆らえない上からの圧力もあったのかもしれません。
だからといって、延命治療を続けるべきではなかったと私は思います。
将来医療関係に進みたいと思っている私には、かなりショックな内容の本でした。
もし私が看護師になったとき、致死量の放射線を浴びた患者を看護することになったらどうしたのだろうか。
原発のある日本に住み、将来医療の道を志すものとして、他人事で済ませてはいけない問題だと思います。
患者の声に従い延命治療をすべきではないと職場で声を上げられるだろうかと不安でなりません。
今後の職場での人間関係を思えば、延命治療を続けるべきではないと発言するのはとても勇気がいることだと思うからです。
インフォームドコンセントが重視されている現在なら、患者の意見を尊重して延命治療をやめるべきです。
しかし、実際に声を上げるのはとても困難になると思います。
特に当時はインフォームドコンセントの考えが浸透していたわけではなかったので、なおさら延命治療を続けないという選択肢は取りにくかったでしょう。
しかし、この治療は非人道的な人体実験の側面が強かったと思います。
だからこそ彼らの治療を担当した人々は、後悔の念が強いのではないでしょうか。
治療を行った人々の心も心配です。
もちろん患者やその遺族の方々の心痛は、筆舌に尽くしがたいものだったと思います。
けれども、医療従事者を責めるのは間違いだと思います。
確かに医療従事者の責任もありますが、それ以上に原発というものを推進してきた私たちにも原因があると思います。
原発を積極的に批判していた一部の方を除いたすべての日本人に責任があるのではないでしょうか。少なくとも私はそう思います。
父に薦められてこの本を読むことにしたのですが、読みやすい文章だったにも関わらず、あまりにも過酷な内容になかなかページが進みませんでした。
放射能にむしばまれた人間の体がどう朽ちていくのかが描かれていました。
生物学を学び始めた私にとって、放射能でグチャグチャになった染色体の写真はとても異様なものに思えました。
あれほど染色体が破壊されていても、数日なら普通に日常を過ごせることにも驚きました。
原爆後のピンピンコロリを連想せずにはいられませんでした。
専門家の医師ならあの染色体の写真に一層驚いたのではないでしょうか。
全身の染色体があれほどまでに破壊された状態では、たとえ百年後の医学であっても治療は不可能でしょう。
染色体が破壊されれば、細胞はまともに代謝できなくなります。
だからこそ、延命治療が人体実験のように思えてならないのです。
83日間も治療を続ける必要があったのでしょうか。
もし私が患者だったら後の医学のためであっても、無理やり生命活動を維持され続けるのはごめんこうむります。
私は将来医療に携わりたいし、医学にとってデータが重要なのも理解はできるのですが、あのような延命治療は受けたくありません。
また原子力発電所で働いている人の多くが、熟練した労働者ではないことにも驚きました。
専門家からすれば、ありえない危険なやり方で作業をしていたそうです。
原子力発電所というリスクの高い職場に知識や経験が少ない方が従事しているのは、放射線への恐怖や年間の放射線許容量といった問題があるからだと思います。
原発で働いている人は結婚などで差別されることもあるそうです。
労働者をここまで虐げる職場が存在していいのでしょうか。
確かに原発は短期的に見れば経済的なメリットはあるかもしれません。
しかし、長期的に見れば原発の経済的なメリットはなくなりますし、そもそも労働者や周囲の住人を巻き込む問題を経済的な尺度だけで測るのは、人道的におかしいといえないでしょうか。
この本を読むまでJCO臨界事故についてほとんど知りませんでした。
このような事故が過去にあったにも関わらず、福島第一原発で事故が起きたことが残念でなりません。
この本を読んで改めて医療の道に進むことへの厳しさを学べました。
医療従事者は、患者の声を何よりも大事にすべきなんだと思うようになりました。
進路に悩んでいる時期にこの本と出会えてよかったです。
辛いことも多いかもしれませんが、医療の道に進みたいと強く思えるきっかけになりました。
同時に原発を有権者としてどう判断すべきかということに関しても考えが深まりました。
もちろん原発だけが争点ではありません。折しも選挙権の年齢が引き下げられ、政治は高校生にとっても避けては通れないものになりました。
この機会に原発や他の争点についてももっと調べたいと思うようになりました。
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