「おしゃれと無縁に生きる」(村上 龍)の読書感想文 書き方の例文2028字

 

読書感想文
「おしゃれと無縁に生きる」(村上 龍)
※2028文字※

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「『おしゃれ』より『普通』のほうがむずかしい」、という文句が書かれている帯に一目ぼれをして購入しました。

このエッセイには村上龍独自の視点から、現代を生きる私たち、特に日本人に向けて厳しくも温かみのある言葉がつづられています。

厳しい言葉の表現でも不快に感じないのは、私たち日本人が忘れかけているもしくは失ってしまった誇りのようなものに対して、真剣に問いかけている著者の姿勢が感じられるからだと思います。

エッセイは、タイトルの「おしゃれと無縁に生きる」から始まります。

著者はおしゃれをすること自体を批判したり、否定したりしているわけでは決してありません。

ただし、おしゃれを目的として時間と金を使うこと、に疑問を投げかけているのだと思います。

イタリア人はおしゃれが多い、という一般的なイメージがあることを例に出し、実際のイタリア人男性はシャツだけを基本ファッションとしている人が多いと述べています。

また、健全なお金持ちほどおしゃれに時間と思考をかけないとも述べています。

周りに人が集まる人は、そんなところで努力や浪費をしないのです。

おしゃれを意識しすぎることや体裁を気にし過ぎることと縁を絶つことで、人は本当の魅力が出てくるのではないでしょうか。

村上龍のエッセイの特徴として、必ずと言っていいほど経済・会社・ビジネスのことについて書かれています。

この本の中でも、題の一つである「モーレツと目標」には、日本の高度経済成長が生んだ悪しき先例と、それを引きずって生きている現代の人々について独自の視点で述べられています。

著者が言う“悪しき先例”とは、家族や自分を犠牲にして、まさにモーレツに働き、残業と飲み歩きの毎日を送るサラリーマンの風潮のことで、高度経済成長期は明確な“目標”が無くてもこのモーレツささえあれば増大な需要により経済は上昇した、というのです。

しかし、グローバル化が進む現代は、目標と戦略を持たねば会社として、勤め人として生き残れない時代です。著者は、悪しき先例を引きずる日本企業とサラリーマンに対して、暗に説教をしているようにも感じました。

戦後から高度経済成長が始まるあたりに生きた人々がよく口にする、「昔は良い時代だった」という言葉にも反対するような意見を述べています。

私も映画や音楽に影響されて、昭和という時代にあこがれている内の一人ですが、どうやら私は昭和の良い面しか知らなかったようです。

昔は日本でも貧乏で生活が不衛生のために病死する子どもが多かったこと、寒さや暑さをしのぐための電化製品がまったく普及していなかったことなど、昭和と言う時代がいかにシビアな時代であったかが著者の体験も交えて昭和リアルに伝えられています。

イメージや妄想ではなく、もっとリアルに物事を見る目線を持つことがいかに足りていないかを、強く感じさせられました。

現代における経済政策である、観光立国としての「おもてなし」の精神を掲げる日本政府の動きについても言及されています。

その中で私自身、身につまされるような思いをした一文がありました。

それは、
「私たち日本人は外国人の視点に立って物事を考えることが苦手な人が多い」
という部分です。

英語を話せる人が、少ないという技術的な側面もそうですが、何よりもイタリアやフランスなどの観光立国として成り立っている国と、日本の観光産業に対する政府や国民の接し方が異なっていると述べられていました。

読んでいただきたいので詳細は割愛しますが、観光客を惹きつけるのは政府の戦略や見せ掛けだけの「おもてなし」ではなく、ロマンであると書かれています。

私自身は観光に関わる仕事や活動をしているわけではありませんが、豊かな自然風景と独自の街並み・文化が多く存在する日本がなぜこれまで観光立国として成立していなかったのか。

そのヒントが著者の主張に隠されているような気がしました。

こうしたたくさんの主張・考え・意見が書かれている中で私が最も共感したのが、著者が無償のボランティアとして行っている学校や地域での講演活動についての話です。

著者は公立中学校での講演の中で、生徒に「夢は持たなければなりませんか?」という質問を受けます。

この質問に対して著者は、
「今夢がなくても決して落ち込むことはない、好奇心と興味を大事にして積極的に生きてください」
という趣旨の返答をしたそうです。

つまり、夢を見つけることが大切なのではなく、今自分が好きなことに精一杯取り組んだ結果が夢に繋がるのだということを言っているのだと思います。

子どもだけでなく、私たち大人も自分の夢や目標を見失っている人が多い現代、まずは時代を注視し、自分という人間に向きあいながら、改めて興味や好奇心を育んでいくことが必要なのではないでしょうか。

この「おしゃれと無縁に生きる」からは、頭に詰め込むような知識よりも、シンプルかつ夢を持って生きるために必要な人生のヒントを貰うことができたと感じています。

 

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