「恋恋蓮歩の演習」(森博嗣)の読書感想文 書き方の例文2000字

 

読書感想文
「恋恋蓮歩の演習」(森博嗣)
※2075文字※

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私のおすすめの一冊です。

私は森博嗣の作品が好きなのですが、本作は特にお気に入りの一冊となっています。

ミステリー作品ですが、他の森博嗣の作品を読む場合と同じように(他の作者の作品でもそうですが)、特に事件の概要や犯人(本作では被害者はいませんが)を考えて読むのではなく、登場人物のキャラクターや思考回路なんかを楽しめることもよい点。

さらに本作で特筆すべきは名言がとても多いことです。

ストーリーはVシリーズレギュラーメンバーの自称探偵、その実美術品専門の泥棒・保呂草潤平や本作のゲストキャラクター・大笛梨枝(大人ですが、とてもかわいい女性です)らの視点で進んでいきますが、その中で独白というか、独り言というか、そういった様子で彼らは名言をたくさん話してくれています。

本作は森博嗣のSM(創平&萌絵)シリーズに続く第2弾、V(紅子)シリーズの6作品目。時系列的には主人公の瀬在丸紅子が犀川創平のお母さんですからSMシリーズの過去編になります。

全ての森作品の核となる天才・真賀田四季もVシリーズ最終巻で少しだけ登場しています。

そんな一連の流れの中で、本作の位置づけはたいしたものではありません。

さらっとした幕間の一作品といった感じですが、それだけに作者としてはシリーズ全体の流れとか伏線とか、そういう難しい部分に力を入れる必要がなかったのでスムーズに書け、その分自然と名言がたくさん入っていったのでしょう。

私が特に好きなワードをいくつか紹介します。

「道が一本あれば、行く手は自然にその一つに決まる。選択する機会が失われる。

その不自由さに、人は安堵して歩み続けるだろう。立ち尽くすよりも歩く方が楽だからだ。

そして、その歩かされている営みを「意志」だと思い込み、その楽さ加減を「幸せ」だと錯覚する。

孤独という自由を、人は恐れ、その価値を評価しないよう、真の意志の存在を忘れるよう。

人は努力する。自分たちを拘束する力を「正しい」と呼んで崇めるのだ・・・」(保呂草)

ほんとにこれは読んで以来ずっと私の心のどこかに大切に置いてあります。

読んだのは高校のときでしたが、社会人になってからずっしりきますね。

いつもどこかにある言葉、持っていれば鳥瞰できる、自由になれる言葉です。

「ストッパが外れたみたいに、この日、梨枝は自分のことを話した。たぶん、アーモンド・ポッキーがストッパだったのだろう・・・・・」

すごい気持ちわかりますね。そんな感じの自分を一歩引いてみている自分がいる感じもわかります。

そういう視点って大事ですよね。梨枝さんはどんどんかわいさが増していく感じです。

作品の中のふとした場面でこういった世の中への視野、人生への視野やビビットな感性盛り込めるのはさすがといったところです。

さて、ストーリーの方はさまざまな登場人物の思惑や事情が絡んでいますのであとから読み返してみても伏線は多くて面白いと思いますよ。

結果的には「人の死なないミステリー」というやつです。

何か事件に巻き込まれて行方不明になったと思われた梨枝の恋人・羽村は、保呂草潤平の一人二役です。

勘のいい方は、羽村の正体、大笛梨枝と保呂草の関係に中盤で気が付くかもしれません。

それに気づけば、明らかに誰も死んでないやんとわかりますのであとは事件の全体像を想像するのが楽しいです。

これは誰が何の目的で・・・??

また後半で本職に励む保呂草は、目的の絵をターゲットの船室から運び出そうとしますが、これはちょっと一人では無理だろうとわかります。

ですから明らかに共犯者がいるであろうことも、一部の読者は気づくと思いますしこれまでの流れを踏まえるとそこから全体像がなんとなく読めるでしょう。

森作品の場合いわいる「動機」というのはどうでもいいようなものですが、用意周到に準備された計画は感情的なものだけで実現できるものではありません。

そこには冷静で沈着な思考が必要です。自分と周囲との位置関係を客観的に評価する目もいります。とはいえ、いざやろうというには大きな力がいりますよね。

そこで梨枝を踏み出させたものはなんだったのか。

その点は終盤にさらりとさわやかにこう表現されています。

「さらには、ほんのわずかばかりの風が、誰かを愛するために、自分は生きているのだという思い込みの風が、くすぐる程度に吹けばよい。人はそんな微風で動くものだ。」とてもさわやかな印象を与えるエンドです。

ものすごく簡単にいうと仕事のついでに冒険と恋を楽しんだ保呂草と、実はすごいキーパーソンで同じくちょっとした冒険と恋を楽しんだ梨枝の人生の一幕といったところ。梨枝の登場はこの作品のみです。

彼女には彼女の人生がありますから。

事件の舞台が豪華客船という点がベタというかクラシカルな印象をかもしながらも、ちょっとした非日常を与えてくれています。

こういう舞台設定は私は好きですよ。

主人公の瀬在丸紅子やレギュラーメンバーの小鳥遊練無、香具山紫子たちもいつも通りビビットに活躍してくれていますので飽きはこないです。

昔はたくさん本を読んだとは言えませんが、社会人になると本を読む時間は減ってしまいます。

考えなければならないことも増えますし、今は空き時間が圧倒的に少ない。

ですが、そんな生活の中でこそ(多くの人と同じような境遇ですね)、心の中に置いておきたい一冊です。

 

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