「沈まぬ太陽」(山崎豊子)の読書感想文 書き方の例文2004字

 

読書感想文
「沈まぬ太陽」(山崎豊子)
※2004文字※

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沈まぬ太陽ほど、著者の山崎豊子さんの取材力が発揮された作品は無いのではないでしょうか。

山崎豊子さんの作品はすべてが彼女の取材力とその熱意によって生まれた作品がほとんどです。

その中にあって沈まぬ太陽は、ナショナルフラッグを表する航空会社への取材とその航空会社が起こした御巣鷹山の墜落事故、そして労働組合の戦いをも描いた非常にシビアで、切実な作品となっています。

私は、この作品を読むにあたって、自分を主役である恩地元に重ねて読むことが大好きです。

労働組合で自分の考えを貫き通し、御巣鷹山の墜落事故に対する謝罪を組合としても会社としてももっとすべきだと言うこのスタンスは当たり前のことながら、組織に入りながらここまで貫き通す事は非常に難しいと思います。

そして、その結果として航空会社からひどい仕打ちを受け、誰が考えても左遷であろうと思われる転勤に次ぐ転勤、しかし、それニモマケズ自分の信念を貫き通そうとするこの恩地元の推進力には感服すべきばかりです。

私自身も、昔からなかなか融通がきかず、社会に出てからも組織に入っても自分なりの正義感を貫き通すばかり、損な役回りを受けることが多い立場にあります。

もちろん、様々な小説などでこういった立場の人間は出てくるわけですが、沈まぬ太陽の恩地元ほど実直な人物はなかなか出てきません。

私が想像するに、山崎豊子さんが航空会社と言う大きな舞台を描くにあたって、最初に描かればならないと思ったのは信念の強い人物による正義の完遂だと言う事では無いでしょうか。

この物語は恩地元の強い信念なくしては全く描ききれるものではなかったと思います。

では、私が人生を重ねてしまう恩地元のこの物語の中での出来事を少しずつ検証してみたいと思います。

まず最初に、航空会社の大惨事にある御巣鷹山の墜落事故を取材した結果の物語です。

航空会社としてどれだけ責任を持つべきか、そしてそこに関わる航空会社の人々がどのような苦労を持って仕事をしてきたのか、さらには被害者の遺族がどのような思いを持って航空会社と接してきたのかを如実に物語っています。

時代も流れ、我々にとっては少しずつ記憶も薄れていっていますが、山崎豊子さんのメッセージとしては決して忘れてはならない惨事であり、繰り返してはならないために記憶に留めようと言うメッセージがあったのではないかと思います。

そして、主人公である恩地元は正しく繰り返しこの惨事を発生させないために何ができるのか、そして被害者遺族に何ができるのかを真剣に考えた1番の航空会社の社員だったと言う事は言うまでもありません。

恩地元の物語だけではなく、すべてのビジネスマンがこうして他人事にせず、自分の会社のことやステークホルダーのことを考えることができるようになればもっと社会が変わるのではないでしょうか。

次に恩地元を待ち受けていたのは、海外への赴任です。

ある意味労働組合でがんばりすぎたおかげで会社から疎まれ左遷を受けたと言うのが正直なところでは無いでしょうか。

しかしながら、恩地元はそのような境遇にあっても自分の会社のために何ができるのかを必死で考え、会社の利益になるような行動を続けます。

現地の人々との対立や和解、最終的には利害を共にすることによって全て変えていくことになります。

ここまでをみてくると、企業や社会はあらゆるステークホルダーが入り混じりながら、成り立っていることがよくわかります。

そしてその方向性というのは何と言っても、強い信念を持って動き続ける一握りの人間の影響力が非常に大きなものになるわけです。

この作品の中で山崎豊子さんが描きたかったのは、もちろん航空会社に関する社会的課題の提起がある事は言うまでもありません。

しかしそれ以上に人間の信念や志と言うものがいかに社会を動かすのか、企業を動かすのかというところを描きたかったのではないでしょうか。

この作品は映画化もされ、私自身その映画も拝見しました。

主役である恩地元を演じる渡辺謙さんの演技は正しく信念の強さを醸し出しています。

山崎豊子さんの取材能力によって描ききられたこの作品は山崎豊子さんにとっての最高傑作であると私は感じています。

もちろん、フィクションとノンフィクションの間でどこまで描き切るかは色々な圧力もあったのではないでしょうか。

こうしたデリケートな作品だからこそ、山崎豊子さんのようなしっかりした取材能力や人脈があって成り立つものだと私は思います。

山崎豊子さんにはもっと長生きしてもらって、同じような社会課題を提起するような作品をもっと描いて欲しかったなと感じています。

まさしく、筆の力を持って山崎豊子さんであれば、社会を動かすこともできたのではないでしょうか。

それも何の偏りもない社会的事実を作品として文章化することで社会や世論を動かすことができる強さは山崎豊子さんの作品とならではの力だと思います。

 

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