「ナイルパーチの女子会」(柚木麻子)の読書感想文 書き方の例文1200字

 

読書感想文
「ナイルパーチの女子会」(柚木麻子)
※1442文字※

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「女子会」という、なんだかキラキラと楽しそうな響きのタイトルに惹かれ手に取ったこの本。

表紙のイラストには女性が二人描かれています。

女同士の友情物語かと、期待しながら読み進めること数分。

ページをめくるにつれて、静かな恐怖が背中にひたひたと忍び寄り始めました。

これは美しい友情の物語などではない。

女同士の、血肉を争うホラー小説といっても過言ではないでしょう。

「ナイルパーチ」とは、スズキ目アカメ属の淡水魚です。

淡白な味で知られる食用魚ですが、一つの生態系を破壊してしまうほどの凶暴性を持つこの魚。

その要注意外来生物を、この小説に登場する女性二人になぞらえて「ナイルパーチの女子会」というタイトルなのだとハッと気づきました。

友達が欲しくて欲しくて、たまらない女子二人。

大手の商社勤務であり、美貌の持ち主「志村栄利子」と専業主婦で、人気ブロガーのおひょうこと「丸尾翔子」。

この二人が、お互いを食い殺すかのように相手を求め羽交い絞めして苦しめていく様に、恐怖を覚えました。

怖い怖いと思いながらも、ページをめくる手が最後まで止まらなかったのはどこかでこの二人の仲に、自分の姿を見たからなのかもしれません。

女性として、女性同士の関係が一筋縄ではいかないことを私は知っています。

どんなに仲良さそうにふるまっていても、相手のいないところで別の誰かを相手に、親しい相手を突き落とし悪口を言い合う。

そういった、女性同士の怖さや決して触れられたくない恥部までもまざまざとみせつけられる恐怖。

はたから見れば、沢山の物を持っている栄利子が、唯一手に入れられなかった「女同士の友情」という形の見えないものに縛られている姿が滑稽でありながら、逆に同情すらわいてくるから不思議です。

その栄利子の毒牙にかかったのが、専業主婦の翔子。

翔子の綴る「おひょうのダメ奥さん日記」の、伸び伸びとしたゆるやかさに引かれた栄利子は偶然を装いながら、静かに彼女に近づきます。

最初のころは、まるで付き合いたてのカップルのような新鮮さとお互いにひかれあう間柄が心地良い物でした。

いつしか歯車が狂い、まるで翔子のストーカーと化し少しずつ二人の仲が、ぎくしゃくし始めたのです。

ここで、大人の女性なら二人の関係にしばらく距離が置けたのでしょう。

栄利子は逆に、その幼児性を暴走させまるで、スーパーでお菓子が欲しいと寝っ転がって暴れる子供のように翔子を求め続けます。

栄利子は、翔子の浮気現場の写真で彼女を脅しながらも友人関係を持続させようとします。

その様は狂気としか言いようがありません。

喉元にナイフを突きつけながら「私たちは、永遠の親友よね」と微笑み続けている栄利子。

こんなにひどい女なのに、彼女という人間を知れば知るほど同情が増していきます。

翔子自身もまた、嫌悪していた実父の関係を克復しようともがくうちに自分の見えなかった、心の闇をまざまざと見るようになります。

あれほど逃げ出したかった栄利子の片鱗を、自分自身の中に見出した時彼女は愕然とします。

なぜ、自分に友達ができなかったか。

なぜ、大事な夫を自分から遠ざけてしまったのか。

どこにでもいそうで、どこかずれている女二人。

最後に少しだけ光が見え、物語は幕を閉じます。

著者の柚木麻子は、女性同士の心の闇を描くのが本当に上手です。

この本を男性が読んだら、女性の恐ろしさに縮みあがること間違いなしでしょう。

日常に潜む、ナイルパーチたちの静かな戦いに気づかない方が男たちにとって幸せな事なのかもしれません。

 

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