「神様のカルテ」読書感想文の書き方の例文2000字

※2008文字

「神様のカルテ」(夏川草介)を読んでの感想

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夏川草介さんの作品をはじめて読んだのが
この「神様のカルテ」でした。
もともと、私自身が医療ミステリーや先進医療をテーマ
にした作品、さらには心臓移植やDNA、脳死という重い
テーマが大好きなので試しに読んでみたというのが
きっかけでした。

しかし、実際のこの作品の内容は全く前述に提示したような
ものではありませんでした。
どちらかといえば、ヒューマンドラマです。
そして、長野県の地域医療を通じて地域医療の姿を考える
というテーマもありました。
主な登場人物は主役である一止と奥さんのハルです。
とにかく二人とも素朴で朴訥な人柄でまさしく優しい
という言葉がぴったりです。

そして、この二人が住んでいるアパートにはいろいろな人物が
住んでいて、まさしく同じ屋根の下に住んでいる同志、
そして常にお酒の場を通じて、喜びも悲しみも共有する存在
といえるのではないでしょうか。

さて、この作品の舞台は長野の病院ということをご紹介しましたが、
地域医療を考える深いテーマも隠されています。
若い大学を出た医師がなかなか地域に根付かない、その結果、
地域の医療機関は慢性的に人材不足であり、医療レベルも
なかなか上がらないという現実をこの作品を通じて
知ることが出きます。
しかし、逆にこうした地方にはご高齢の方も多く、
地域医療を頼りにしているわけです。
医師一人当たりの患者数を考えた場合には専門性の面でも、
人数の面でもかなり都市部に比べると厳しいことは
いうまでもありません。

主人公である一止は若くしてこのことに気づき、自分自身が
こうした地域医療で生きていくべき人材だという決心を
決めるわけです。
そして、この考えに対して妻のハルも理解を示します。
何しろハルはフリーのカメラマンだけに長野の自然を
はじめとして、いろいろな風景さえあれば問題なく人生を
クリエイティブに生きていけるわけですから。
この二人を中心に物語は進んでいきます。
そして、長野の病院にはさまざまな背景を抱えた患者さんが
訪れるわけですが、病とともに、どこか心にも影を持っている
患者さんばかりです。
こうした患者さんを一止は一人ひとり、丁寧に接することで、
完治へと導きます。

そして、こうした地域医療に対して、確固たるスタンスをもって
人生をささげてきた大狸先生や古狐先生は一止にとって、
目標でもあり、理想となっていきます。
二人の師匠ともいえる人物たちも一止がこうした地域医療の現場に
向いていると感じ、自然と接する中で成長を促していくところも
非常にホットで心温まるところがあります。

もちろん、患者だけではなく、一止の大学時代の同期がインターンで
同じ病院に来た際ももちろん、いろいろな意見の相違があります。
それはそうでしょう。
24時間365日、休みのない地域医療の現場が自分の居場所と考えている
一止と大学病院や開業医を目指す立場の人間ではそもそもの価値観が
異なるわけです。
しかし、穏やかな一止はそんな意見の相違があるときも、
決して自分の考え方を押し付けようとはしません。

ただただ、穏やかに自分の仕事を全うしようとするだけです。
そして、その姿を見て、地域医療に理解を示す人間も出てくれば、
やはりあわないと考える人間もいます。
それはそれで構わないのだと一止は最初から考えているわけです。

こうした地域医療の現場ですからもちろん、一止の力が及ばず、
なくなってしまう患者さんも出てきます。
しかし、この作品の中で地域医療の力なさを嘆いたり、
医療ミスだというクレームを投げかけるような方はいません。
なぜなら、一止をはじめとしたスタッフが本当に地域医療を
深く考えて、精一杯、治療に挑んでいることをよく理解して
いるからです。
一止は穏やかながらも信念をもって、医療に取り組んでいます。
それでもたまには自分に自信を失うシーンが出てきます。
そんな時に彼を助けてくれるのが同じ宿舎の同居人たちです。
お酒を酌み交わしながらいろいろな意見を交換して、人間としての
成長を果たしていくわけです。
そして、何よりも彼にとって最愛の妻であるハルはとても優しく、
そして一止の一番の理解者であり続けます。

後で知ったのですがこの地域医療のリアルさや患者目線でも
しっかり描く作品のリアルさ、これは夏川草介さん自身が
医師であることからなせる業だということです。

しかし、夏川さんは地域医療はこうあるべきだというような
押し付けは全く作品の中では訴えていないように思います。
しかし、意思とは医療とはどのようにあるべきだということは
しっかり描いてくれています。
そして、一歩医療現場を離れた際には一人の人間として、
一人の家庭人として人格があるのだということもしっかり
描いているところが実に面白いところだと思いました。

あえて、医療ミステリーではなく、こうしたヒューマンドラマを
地域医療を通して描き切ったこの作品、続編も出ていますので
一止の成長を是非、作品を通じて読んでみたいと考えています。