「こころ」読書感想文の書き方の例文2000字

※2098文字

「こころ」(夏目漱石)を読んでの感想

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私が夏目漱石の「こころ」を初めて読んだのは高校生の
国語の教科書でした。
私はそれまでに熱心に本を読んだことがなく、
有名な作家の小説を何となく目で追っていたくらいのもの
だったのですが、この「こころ」は、物語の先が
どうなっていくのかドキドキしながら夢中になれた
初めての本です。

「こころ」は上、中、下の三部構成になっているのですが、
教科書では「中」が省略されていました。
(どうやら多くの教科書で中は省略されているようですね)
国語の先生はこの作品の解説をしながらいろいろと授業を
してくれていたのだと思うのですが、私は先生の授業よりも、
この先どのような物語になっていくのかを我慢しきれずに
勝手に先を読んでいたことを思い出します。
最後に先生から「この作品に興味がある人は1冊購入して
省略された中も含めて読んでみるといいよ」
と話してくれたことだけは覚えています。

「こころ」のあらすじは「私」と人物が「先生」という
存在に惹かれ、その先生との記憶を回想する前半・中盤と、
先生がお嬢さんとの恋を成就させるために友人であった
Kに対して仕打ちを独白する後半とで構成されています。
私がどうしてこの「こころ」に惹かれたのか、
まず一つは夏目漱石の文章がとても好きだということです。
人物や風景の描写、心象描写、人物の台詞、どれをとっても
素晴らしいと感じること。
例えば冒頭の砂浜で先生と私が出会う場面と親しくなる
までの過程、先生の家に通うようになってから
先生と先生の奥さんと私との繋がり、先生が過去に何か
後ろめたいものを潜ませている感じさせる所、
そういう場面一つの文章をとっても美しく、またこの現代にも
通じるドキッとするようなものを感じました。

そして物語の運び方が自然でテンポ良く読みやすいということ。
それが「次はどうなっていくのだろう」という思わず
先を知りたくなる衝動を駆り立てるのだと思います。
省略された「中」の中で「私」が死が訪れようとしている
直前の父を置いて、先生の過去を秘めた手紙を電車で
読み始めて先生の独白へと物語の後半へと
結びつけていくところなど、読んでいてその時の風景が
手に取るに分かるところや、早く先を知りたいと
思わせるような文章の流れは、読んでいて物語の世界の中へ
引きずり込まれてしまいます。

どうして今の作家にではなく明治時代の古典の小説にこれまで
惹かれたのか分からないのですが、それはやはり良き作品
というのは時代をいくら経過しても色褪せない普遍的なもの
だからだと思います。
だからこそ今でも教科書の中に収められるくらい完成された、
いわば典型的な美しい小説だからだと思います。

もう一つ、私がこの「こころ」に惹かれた最大の理由は、
「先生」という人物の中に、私と重なる部分があるということです。
もちろん私は先生と同じような経験でも性格でもありませんが、
お嬢さんとの恋を果たすために友人であるKに対して行なった
狡猾な部分、そしてそれによって一生背負わなければならなくなった
暗い影と戦っている部分、そこに私は共感を強く覚えました。

中でも印象に残っている部分を引用させてもらうと
「私は歯を食いしばって、何で他の邪魔をするのかと怒鳴り付けます。
不可思議な力は冷やかな声で笑います。自分で能く知っている癖にと
云います。私は又ぐたりとなります。」

この一部に、先生がこれまでに自分が犯してしまった罪に対して、
何度無く立ち上がろうとしたこと。
そしてそう思う度に心の中にいるもう1人の自分から、
お前にはそんな資格は無いのだと指摘されること。
その戦いの連続だったことが能く伝わってきました。

私はこの「こころ」を初めて読んでから、何度となく
この作品を読み返しました。
そして読み返す度に新しい発見があり、また新しい感覚が
私の中に入ってきます。
私はどうしてもこの作品を手にして読む度に「私」ではなく「先生」の側に立って読んでいき、先生の側に立ってこの作品から何かを
得ようとしていました。
でもここ最近になって今までに目にすることも無かった
私以外の「こころ」を読んだ人の解説を何気なく読んでみると、
また違ったこの「こころ」の魅力に触れられました。

どうしても自分だけの解釈だけだと決められた枠の中で
作品を捉えてしまうのですが、そこに別の方の見方や解説を読むと、
全然違う角度からこの「こころ」を捉えることが出来ました。
特にその中でも姜尚中さんの「こころ」を解説する本の中で、
「私が少年期に熱心に読めた本」というような文章にあたった時、
やはりこの作品には他の作品にはない何か強い力を秘めているのだ
と感じました。
もちろん自分がその作品に対して感じた正直な感想は大切なのですが、
そこを柱として他の方の感想を読んでみると、その作品の奥深さを
知ることもできるのでとてもお勧めです。

私はこの「こころ」に惹かれてから、他の小説にも
熱心に読むようになりました。
小説を読むことの面白さ、そして本を読むことを通して
自分自身が変わっていけることを知った最初の本です。

「こころ」という作品は文字通り、私のこころの中に
強く焼きつられた欠けがえのない作品です。