「人間椅子」読書感想文の書き方の例文1200字

※2028文字

「人間椅子」(江戸川乱歩)を読んでの感想

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江戸川乱歩と聞けば、少年探偵団シリーズを思い浮かべる
方も多いでしょう。
少年探偵団と自分自身を重ねながら読んでいた、という方も
多いと思います。
私はそうではなく、この『人間椅子』で江戸川乱歩の小説世界に
足を踏み入れました。
こちらは短編集で、「人間椅子」の他にも、
「目羅博士の不思議な犯罪」、「お正登場」「二癈人」
「押絵と旅する男」などの短編を複数収録しています。

このどれもこれもが非常に面白い、ジャンルとしては
奇怪小説に当たるそうです。
実際に読んでみると、これらの独特の世界観を感じることができます。
独特の世界観とは言っても、その世界観を持っているのは
あくまでも作中に登場する異常な人物達だけで、
彼らの独白でストーリーが展開されていく、というのが、
作者のスタイルのようです。

実際に、この『人間椅子』に収録されている小説は
ほぼすべてが独白形式で描かれています。
タイトルにもなっている「人間椅子」は、乱歩を象徴する作品と
言ってもいい位に有名で、人気のある作品です。
そのことだけは知っていたので、読んでみるとその面白さの神髄
のようなものを感じました。

探偵小説や、その手のドラマなどでは、どんどんと謎が
明るみになって行く過程を楽しむもので、私は読んだ事はないので、
確かのことは言えませんが、乱歩の少年探偵団シリーズなどでも、
その過程を楽しめるようになっているのでないか、と思います。
そう思うのも、この人間椅子では、
最初からどこかおどろおどろしいものを感じるように
書かれているのですが、その原因が一体なんなのか、
という点は物語の終盤に差し掛かるまでは分かりません。
けれども、それが分かる瞬間というのが、
これまでのことが一気に繋がって、はっ、とするのです。

そこまでの繋がりを知った時の驚きや、さらにその後はどうなるのだろう、
と思うと、ページをめくる手がどんどん進みます。
そして、最後のオチまでもが完璧なのです。
まるで、作者の掌で踊らされているように、驚きと好奇心を
掻き立てられ、最後の最後に衝撃のラストが待っているので、
読んだ後もかなり印象に残りやすい作品でした。

もちろん、「人間椅子」以外の作品も非常に面白いものです。
特にオススメなのは「目羅博士の不思議な犯罪」、「二癈人」
「押絵と旅する男」です。
「目羅博士の不思議な犯罪」は呼んでいるとそんな馬鹿な、
と思ってしまうようん荒唐無稽なお話なのですが、
それが妙なリアリティを持って感じられる時があるのです。

それもまた、この乱歩独特の語りの手法なのだろうと私は解釈しています。
また、事実のように感じるのは登場人物として作者自身が
登場していることでしょう。
もちろんフィクションではあると思いますし、フィクションで
しかあり得ない展開を見せるので、そりゃそうだろうと
思っているのですが、それでも読み終わった後にふと思う感想は、
本当にありそうだな、というものでした。

そして、「二癈人」ですが、これはかなり作り込まれている
作品なのではないか、と思いました。
これもまた登場人物の独白が主になっているのですが、
主人公の人物が、二重人格が原因で犯してしまった自分の犯罪について
独白するものです。
独白と言えども、二重人格で無自覚のうちに行っていた犯罪を独白する
ので、それらについては殆ど言い伝えを話しているかのような
独白なのです。

確かなのはそれを犯してしまった自分の気持ちと、
そのせいで崩壊してしまった自分自身の人生についてだけです。
ただ、それがこの作品における重要な点で、読んでいる間にも
ちょっとおかしいな、と思っていたのですが、最後には
その主人公の犯行についての、決定的な事実が判明するのです。
それが分かる瞬間も、この奇妙な事件の裏が判明するのですが、
そのすっきり感と、事実を知った後のもやもやとした感覚は
何とも言えない面白さがあります。

最期に、「押絵と旅する男」についてです。
この作品も怪奇浪漫小説と呼ばれており、乱歩の代表作の一つです。
この作品は、本の最後に掲載されているのですが、
それまでに読んできたものとは一風変わっています。
押絵を持って、それと一緒に旅をしている奇妙な老人の、
彼の体験した奇妙な事件について、旅をしている奇妙な理由も、
まさに奇怪の一言につきます。

また、この話は他の作品と違って、設定などからリアリティは
一切感じません。
ですが、そのふわふわとした、まるで夢の中にいるような世界観が
作り上げられており、それが非常に心地よいのです。

この本でより一層私は江戸川乱歩という作家に付いて、
その他の小説へも興味がわきました。
そうなるのは、この奇妙な作品たちのおかげでもありますが、
私の読んだ角川版の解説の影響も大きいものでした。
歌手で作家の大槻ケンヂの書かれた解説は、江戸川乱歩ファンだと
良く分かるもので、しかも、他の作品へも興味を湧かせてくれるような
内容になっていますし、文章もユーモアにあふれているもので、
大変面白かったです。