「旅に出よう。滅びゆく世界の果てまで。」(萬屋直人)の読書感想文 書き方の例文 1200字

 

読書感想文
「旅に出よう。滅びゆく世界の果てまで。」(萬屋直人)
※1237文字※

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この作品は、いわゆる00年代のライトノベルだそうです。
ライトノベルらしいお約束のようなシーンもたくさんあるので、
昔を懐かしみながら読むことができました。
ただ、他の作品と大きく違う点があり、それが非常に良い演出
になっていました。

その点と言うのが、この作品の独特の設定の、
「喪失症」というものです。
平たく言うとこの病気にかかると、症状が悪化していくにつれて
自分自身の存在が失われてしまうというものです。
自分の名前が何なのかも忘れ、最終的には完全に消えてしまいます。

この設定が異常によく生きていると感じました。
作品のストーリーとしては、少年少女の二人が旅をする、
珍道中のようなものです。
そのため、旅をしている最中の彼らは非常に楽しそうですし、
道中でいろいろな人たちに出会い、喜ぶ様子は、本当にいい旅を
していると感じるものです。

ただ、この「喪失症」に二人もかかっています。
というより、作中に出てくる登場人物にはほぼ全員がこの「喪失症」
にかかっているので、いずれは消えてしまうのです。

もちろん、この設定はかなり早めに説明されますので、旅をしている
最中の彼らは、いつ消えてしまうかも分からない中で、
旅をしているというのです。
それを考えると、この旅は悲劇的なものではないか、
とも思ってしまうこともあります。
自分が消えていくことへの現実逃避ではないか、と。
ですが、最後まで読めば分かるのですが、全くそうではないのです。
というよりも、彼らの楽しそうな旅の様子を見ていると、
ふと「生きている」ということを感じるのです。

主人公の少年、少女は、その名前通り若いです。
ティーンネイジャーです。
そんな二人が旅をするのだから基本的に辛いものです。
その旅の辛さも、様々なハプニングも描写されています。
けれども、彼らが旅をしたのも、そんな辛い思いをしながらも
旅をしているのは、「生きている」ことを自覚しようとしている
のではないか、と感じるのです。

これから消えて行ってしまうことは確実です。
だからこそ、彼らは旅をして、
生きていることを実感しているのではないか、と思いながら
読んでみると、彼らのことを記している手元にある本が、
彼らの足跡のように感じられるようになるのです。
非常に変な感想ではありますが、この本を読んだ後に、
あ、こいつらはきちんと生きたのだな、と思いました。

もちろん、最後までは書いてませんし、書くとかなり後味が
悪くなるだろうとも容易に想像できる、それ程に重たい設定です。
だからこそ、彼らが楽しく旅をして、苦しい事を乗り越えて、
どんどん次の地点へと進んで行っている、ということが輝いて
見えるのではないかな、と思いました。
続編が気になる、とかこの後はどうなったのか、
ということも考えてしまいそうになるのですが、
この作品に至っては、これ以上を考えるのは無粋だと感じました。
彼らがこのように楽しそうに旅ができて、
それをつかの間でも覗き見ることができて面白かった、
それが最終的な私の感想でした。