「舟を編む」読書感想文の書き方の例文1200字

※1284文字

「舟を編む」(三浦しをん)を読んでの感想

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真面目な生き方。

この本は私にとって、大衆文学でもあり、純文学小説でもあり、
はたまた国語辞典のような辞書でもあります。
読み進めていくうちに、著者の三浦しをんは本当に言葉と人間が
好きなんだろうなと感じました。

舞台は東京の大手総合出版社、主人公は真面目で融通が利かず、
対人コミュニケーションも苦手な青年“馬締(まじめ)”という人間です。
そんな彼を取り巻く、様々な性格の人々との人間模様が「言葉」という
ツールを通して鮮やかに、時にセンチメンタルに描写されています。
馬締は営業職で勤務しているのですが、対人関係を築くのが下手で
成績が伸びないばかりか、社内でも孤立している存在です。
かといって、ふてくされるわけでもなく、自分を変えようと自己啓発に
奮闘しているわけでもありません。
営業先に邪険にされ、上司に怒鳴られ、家に帰れば大好きな本を読みながら
コンビニ弁当をこまごまつつくという日常を送っていました。
私はこういう馬締のような人間に憧れたことがあります。
また、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の詩を思い出しました。
ただひたすら黙々と毎日を真面目に生き、怒りもせず、落ち込みもせず、
欲を張らず、1つ好きなことがあればそれだけで人生に豊かさを感じる
ことができる、こんな生き方がしたいと読みながら考えていました。

馬締が住んでいるのは、ちょっと大柄の男がタックルをかませば
つぶれそうなボロボロの木造アパートです。
くどいようですが、私はこういうアパートに住むことにも憧れを感じました。
物語の初めは、そこの大家さんである“タケばあさん”とペットの猫だけが、
馬締の理解者であり、心許せる相手でした。
この猫の描写は、読んだ全員に猫を飼いたくなるような気持ちにさせる
とてもうまいものだと感じました。

そんな馬締はある日、言葉に対する愛を買われて辞書編集部へ
異動することになるのですが、これが彼にとって人生の転機となります。
編集部の人間との友情やトラブル、タケばあさんの孫である
香具矢(かぐや)との恋愛、辞書に対して芽生える情熱もここから始まります。
世間には良くあるような出来事一つで人生は大きく変わるのだと、
私の過去を振り返っても改めて思いました。
特に香具矢との恋愛は物語の見どころの一つだと思います。
恋愛経験のない馬締は、香具矢を想う胸の高鳴りの正体が理解ないあまりに、
国語辞典で「恋愛」という言葉を調べるという奇妙な行動に至ります。
こうした行動は同僚には小馬鹿にされますが、馬締の不器用さと、
言葉に対する信頼と情熱がうまく書かれている場面だと、
著者の描写に感心しました。こうした真面目な人柄は、香具矢だけでなく
小馬鹿にしていた同僚、あらゆる人たちに受け入れられていきます。
馬締自身が劇的に変化したように描かれているわけではありません。
自分の人生に生きがいを見つけたことが、人が寄ってくる要素になったのだ
と思います。
抽象的ですが、私の経験からも、人生に目的を持っている人は確かに人を
惹きつけるオーラをまとっているように感じます。
また、自分を理解してくれる人は必ず存在するのだと勇気くれた
小説でもありました。