「ねじまき鳥クロニクル」読書感想文の書き方の例文2000字

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「ねじまき鳥クロニクル」(村上春樹)を読んでの感想

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「ねじまき鳥クロニクル」は村上春樹の長編小説の一つです。
私はこれまでの村上春樹の小説はほとんど読んでいますが
(エッセイも含め)、その中でもかなり強烈に印象に残った
作品です。
村上春樹の物語は特徴的な文体と、おそらく自分の趣味
である料理や音楽や文学など、具体的なものが小説の中に
たくさん登場してくること。
それが物語の中へと入り込みやすい一つの要素になっている
のではないかと思っています。

私がこの「ねじまき鳥クロニクル」を手にしたのは、
ハードカバーであった本の装丁に惹かれたこと。
そしてそのタイトルです。
また、それまでに村上春樹の他の作品も読んでいたので、
買って読んで損はないだろうと、他の方のレビューや
書評など調べずにこの本を購入し読み始めました。

この「ねじまき鳥クロニクル」は第一部から第三部とかなりの
長編ですが、ただそれを長いと思わせないくらい気持ちよく
読み進めたことが印象として強く残っています。
物語のあらすじは主人公であるオカダトオルが妻クミコの猫探しを
きっかけに不思議な人たちと出会い、そして不思議な世界へと
ひきずりこまれていく。
そんな中で妻の兄である綿谷昇という存在が、トオルを強く苛立たせ、
2人は直接ではなく間接的に戦うことになり、傷つきながらも
自分自身を立て直そうとする話。
私がこの小説を読んで強く印象に残ったこと、そして魅力を感じたのは、
登場人物がとても生き生きとしていること。
主人公のトオル、妻のクミコ、妻の兄である綿谷昇、それらをはじめとても
個性的なキャラクターで満ちあふれていて、どのキャラクターも強く印象に
残っています。
中でも私が気に入っているのは2人。1人は笠原メイ。
主人公が妻の猫を探している時に出会う近所に住む女の子。
ちょっと普通じゃないけど、自分はごく普通だと思っている
笠原メイと主人公との会話のやりとりはとても魅力的でした。
中でも印象に残っているシーンがあって、主人公が井戸の中に
入って考え事をしているときに蓋を閉めてしまった後、
何とか井戸から出てきた主人公に対して
「死ぬまでのぎりぎりの所まで追いつめてみたかった」
という台詞。
これは私には同じような経験はないけれど、もしかすると
自分が同じような状況になった時に、笠原メイと同じような
衝動に駆られてしまうのじゃないかとドキッとしました。
そしてもう一つ、井戸の中で生まれた主人公のアザにキスを
するシーン。
村上春樹の小説にはよく性的な描写が現れてくるのですが、
僕にとってはこの場面が一番性的なものを感じます。
最後に主人公と凍った湖で2人で話すシーンや、トオルと
ふたりで街に出てハゲている人のアンケート調査をしたシーンも
良かったです。
それともう1人強く印象に残っているのは綿谷昇の秘書である牛河。
この人物は後半にしか出てこないけどかなりインパクトが強く
印象に残っていて、私がこれまでに読んできた本の中でも
1、2を争うくらいの個性的なキャラクター。

また他の作品でも出てこないかなと思っていたら「1Q84」で
再び出て来たので感動しました。
この牛河はハゲ頭で背が低く近眼で、また妻に暴力を振るって
愛想をつかされ、仕事では上の人に頭を下げてご機嫌伺いをして、
それでいて事務的能力はかなり秀でたものをもっているという
何ともメチャクチャなのですが、それがこの「ねじまき鳥クロニクル」
の中で読むと不思議と役柄として収まっていて、この作品に緩急をつける
ような存在になっているのではないかと思いました。
特に主人公の家に勝手に入ってビールを飲むシーンとか、最後に喫茶店で
主人公と話すシーンなどが印象に残っています。
そんな個性的な登場人物達が出てくる中で、物語は妻であるクミコを
取り戻そうと主人公であるトオルは綿谷昇と対峙していきます。
私は最初に読んだ時に、実はこの最後の2人のやりとりがそこまで
自分の中に入ってきませんでした。
それよりは先に述べたように個性的なキャラクター達に惹かれていたので、
その印象の方が強かったのですが、読み返していくうちに主人公

と綿谷昇の存在が少しずつ気になってきました。気にはなるけど
それでもそれが一体どういうことを表しているのか(もしかしたら特に
何も表していないのかもしれませんが)もどかしさを覚えるまでに
なってきました。
綿谷昇は心の中に闇を抱え、そしてそれを誰にも見せること無く、
そしてそれを捨てることなく自分の中で水を与え続けて育ててきた。
そしてその水は長女(クミコの姉)から汲んでいたけれど、
その姉は死に、そして時を経てクミコ中にも同じ水があるとを
しった綿谷昇は妹を取り囲んだ。
(精神的にも物理的にも)。
おそらく綿谷昇の抱えるその闇は、どんな人間にも潜んでいる
ものだけど、大抵はその存在を忘れてしまい、
知らないうちになくなってしまうものではないか、
と何度か読んでいるうちにふと考えるようになりました。
主人公であるトオルは綿谷昇と同じく心の中に闇を抱えてはいる
ものの、それを隠そうとはしてこなかったし、忘れてしまうことも
出来なかった。そして何故主人公が綿谷昇に対して苛立ちを感じて
いるのかは、綿谷昇がその闇をいかにも自分は持っていませんよ
という風に装いながら、心の中で1人こっそりと育てている
その姿にあるのではと考えるようになりました。
でもこれもまた読み返していくうちに変化していくかもしれませんし、
実はそんな風にまた見方を変えるような瞬間が来るのを待っている
自分がいます。
この「ねじまき鳥クロニクル」は一度だけでなく、何度も読み返して
みられることを私としてはお勧めします。
読めば読むほど作品の奥深さを知り、そして考えさせられる、
時にクスッと笑わせてくれる、私にとって素晴らしい1冊です。