「ボトルネック」読書感想文の書き方の例文1200字

※1204文字

「ボトルネック」(米澤穂信)読書感想文

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この小説は、私がこれまで読んでこなかった、純文学や
ミステリを読み始めるきっかけとなった本でした。
これは一応、青春ミステリ、というジャンルにあり、
他のミステリと比べると、犯人捜しを行ったりする派手
さこそはありませんが、深く心の刻まれる、「間違い捜し」
を行う作品でした。

主人公のリョウは二年前に死んだ恋人のノゾミが自殺を
した東尋坊へと足を運んだところから始まります。
このリョウ、という少年は、この手の小説には良くいる、
ひねくれた少年です。兄が死んでいたり、恋人に先立たれたり、
とそうなってしまう原因はいくらでも霧がありません。
そんな彼が不思議なことに、東尋坊からうっかりと落ちてしまいます。

落ちた先はなんと不思議な事か、自分自身だけが存在しない
別世界でした。
その世界では、主人公が生まれる際に死んでしまった双子の妹
であるサキ、と名乗る少女のいる世界で、その世界では、サキが
生まれる際に死んでしまったのはリョウだった、ということに
なっています。

いわゆる、もしもの世界にやってきてしまった、という訳です。
その世界では、リョウのいる世界とは全く逆で、様々なことが
うまくいっていました。
主人公の恋人だったノゾミは生きており、兄も生きており、
それどころか主人公の生まれ育った町の中であった様々な不幸
なことが、全て嬉しいことに変化してしまっているのです。
まるで、リョウが生まれなかった方が良かった、と言っている
ような世界です。

このような世界に飛び込んでしまった彼の心情はあまりにも
悲観的な物でしょう。
本当に自分が存在してもいいのか、そのようなことに悩むのは、
中高生ならば誰しもあります。ちょうどこれを読んだ頃は、
リョウと同世代だったので、酷く共感を覚えました。
だからこそ、心に強く残っているのでしょう。

リョウが本当に生まれて来て良かったのか、その答えは
最終的には描かれていません。
多少はその後のヒントになるようなことはありますが、
それは少し否定的なことを表すものでもありました。

ただ、当時はそれがあまりにも悲観的で悲しいものだ、
と感じたものです。
ただ、ある程度成長した後に読んでみると、この悲観的な
最後の場面が、リョウにとってはスタートなのかもしれない、
と感じました。
いくら不幸があったとしても、所詮中高生までの人生でですから、
本当に必要になるかどうかは、リョウがこれからの人生で
何をするかにかかっているのではないか、と大人になってから
もう一度読み返してみればそのようなことを思ってしまいました。

青春時代の悩みは、大人になってからはただ単に昔の思い出に
しかならない、大人になって読めばそんな感想を抱き、若いころに読めば、酷く共感して自分の場合はどうなるのだろうか、と考えさせられた本でした。非常に、私にとっては、自分自身の今後を考えさせられる本であって、それでいて、自分自身の変化を感じられる珍しい本でした。