「東京バンドワゴン」読書感想文の書き方の例文1200字

※1243文字

「東京バンドワゴン」(小路幸也)を読んでの感想

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真ん中には胡麻塩頭の頑固親父、その横で働き者の妻が
味噌汁とお茶碗を配っています。
息子夫婦やその子供も同じ食卓にすわり、時には独身の
娘やお婆ちゃんもいます。居間の座卓の周りにみんなが
集まって食事が始まり、味噌汁とご飯の湯気の間を様々な
会話がにぎやかに飛び交います。
やがてそれが頑固親父の怒鳴り声に変わり、息子と胸倉
をつかみ合うような喧嘩になってしまう・・・。
お婆ちゃんや子供たちはお茶碗とお箸を持って部屋の隅に
避難し、ご飯を食べ続ける・・・。
「東京バンドワゴン」は、そんなかつてテレビ番組の中心
だった「ホームドラマ」なのです。
最近のテレビでは本当に見かけなくなりました。
それと共に、我が家庭でも「みんなで一緒にご飯を食べる」
という事が本当に減ってしまいました。
娘は部活と受験に向けての勉強で帰りが遅くなっています。
妻もまた仕事で帰りが遅く、先に帰った私が食事の支度をして、
一人で先に食べてしまうというのが「日常」となってしまって
います。
自然と、家庭内での会話も減り、娘も録画した番組を見ながらの
食事となってしまって、話しかけられて邪魔されるよりも興味
あるものを見ていたいという雰囲気になっています。
そんな我が家にとっては、この話に出てくるような「みんなが
そろって食事をして、それぞれの思いや悩みを話し合う」という
スタイルは一つの理想であり、「かなわない現実」となって
いるのです。
小説では、内外で起こったトラブルに家族それぞれが奔走します。

しかしトラブルの解決は現代風のスピード感のある格闘シーンでも、
あっと驚く謎解きでもないのです。「人情」や「相手を受け入れる温かさ」
などが紡ぐ、ゆったりとした、それでいて重たい意味を持つ言葉
一つ一つが人の心の中のトラブルをゆっくりと解決していくのです。

どこかノスタルジックではあるが、小さなカフェが併設された
由緒ある古書店が舞台となっていたり、「伝説のロッカー」が
家族にいたりと、ユニークな設定が古臭さを全く感じさせず、
逆に大きな魅力となっている。
また、語り手として登場する、他界してしまったお婆ちゃんが
時々口にするこの家庭の秘密をほのめかす言葉が気になってしまい、
次の一冊へとまたすぐに手が伸びてしまいます。

その後ろにはきっと、「みんなでにぎやかに食事ができ、それぞれが、
『今日一日の出来事』を持ち寄ってそれを一つのおかずにして食事の
時間を楽しいものにする」という、
かつては当たり前だった『食卓を囲む風景』への憧れとうらやましさが
含まれているのだと思います。
それぞれがそれぞれの時間に食べる食事と言うものよりも、「みんなで
ワイワイ食べることの楽しさ」を再認識させてくれるような場面が
満載されているのもこの小説に惹かれる理由だと思うのです。
登場人物の多さで読み始めは戸惑うこともありました。
しかし、最近見直されるようになった「家族みんなで食卓を囲むという
事の温かさや優しさ、そしてその大切さ」をじんわりと感じることの
できる楽しいシリーズでした。