「羊と鋼の森」読書感想文の書き方の例文1200字

※1203文字

「羊と鋼の森」(宮下奈津)を読んでの感想

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いろんな人に読まれるようになって欲しい、そう思う本の
ひとつとして、宮下奈津「羊と鋼の森」を私はご紹介したい
と思います。

この本は知られているとおり「本屋大賞」を受賞した作品で、
そのおかげで知名度はぐんと高まりました。
そのおかげで読む人が増えるだろうことを思うと、素直に
うれしく思うような小説です。

この小説の主人公は、ピアノの調律師です。
高校生のときに高校の体育館のピアノの修理に訪れた調律師を
案内したのをきっかけに、調律の世界へ入っていくことを
決意していきます。
その調律の世界でもがきつづける主人公の姿と、調律を
とおしていろんな人と触れ合うエピソードを連ねて描いた物語です。

なんらかの才能が自分にあれば、と願うように思うことは
誰でも経験のあることだと思います。
そして実際に才能、というものを持つ人がきわめて少ない、
ということもやがて人は実感していき、諦めを覚えていくものです。

けれどもとても好きで、とても打ち込みたいものがあるとき、
才能が無いと理解することはとても残酷な現実です。
好きであることを否定されるような気持ちになることでしょう。
好きでいてはいけないとさえ、思うかもしれません。
その物事に触れているときそのものは、たとえようのないほど
幸福であっても。

その普通の人が抱くであろうジレンマが、とても繊細に描かれて
いると私は感じました。
主人公はピアノの調律がとても好きで巧くなりたいのだけれど、
才能ある先輩との溝はいっこうに埋まる気がしなくて、もがいている。
その温かさのある悲哀が胸を打つのです。

けれどそれでもやめられないいとおしさを、彼はピアノに感じている。
実際に彼が弾くわけではないけれど、そのピアノから体現される
広大な世界のふところにい続けていたいと願っている。
そのために彼はひたすら努力を重ねて、経験を重ねて、少しずつ成長
していく。
汗臭い努力や熱情が力強く描かれているのではなく、とてもとつとつと
した地道な積み重ねで描かれているけれど、その清らかな魂の熱さが、
すごく近しく好ましく、感じられたのです。

だから私は、「どうせ才能なんてないし」、とか、「頑張ってもどうせ
かなわない」、と、好きなものを手放したいという思いを抱いている人
に読んで欲しい、と思います。
好きであるだけで良いのだという気持ちにきっとなれるのではないか、
と思えるからです。

そしてピアノの調律で訪れることになる人々とのエピソードがとても暖かい。
引きこもりのような青年とのほんのわずかな通じ合い、ふたごの少女との
長年にわたる絆のつむぎあい。
また、彼の職場の先輩たちも暖かく厳しく、そしてユーモラスで魅力に
満ちて描かれていて素敵です。
だれもがそれぞれの形でピアノと携わり、その世界に没頭していて愛している。
そんなとても暖かな魅力に満ちていて、じわじわと胸にしみてくるような、
そんな小説です。

いろんな人に読んでみて欲しいと、そう思うのです。