「死者の奢り・飼育」読書感想文の書き方の例文1200字

※1264文字

「死者の奢り・飼育」(大江健三郎)を読んでの感想

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本書には、大江健三郎の初期の名作、死者の奢りと飼育、
その他の短編が収録されていました。
やはり、そのすべてに共通することですが、大江健三郎の
描く世界というのは、どことなく気持ちの悪い物が多いです。
それが意図的なのか、それとも大江健三郎の捉えている現実
とはそのようなものなのか分かりかねますが、独特の生理的に
来る気持ちの悪い描写が多いように思います。

特に名作の二作品は、描写や比喩などで直接的な気持ち悪さを
訴えかけて来ます。死体処理場でアルバイトをする大学生が
主人公の「死者の奢り」はその描写力の高さから、まるで自分が
その場にいるような感じがします。
何より、大江健三郎の描写の中でも、非常にイメージに訴え
かけるような書き方をしているおかげで、想像と結びつきやすく、
その点は非常に上手いと感じさせてくれます。
ただ、どうしようもないくらいに気持ちの悪い描写が続いて行く
ので、好き嫌いのどちらかで言えば、嫌いでした。

恐らく描いているテーマとしては生と死なのでしょう。
主人公のアルバイト仲間として登場する、中絶のためにお金を
稼ごうとしている女子学生の存在が異質に際立っています。
それでいて、自分自身が生きるために、死体処理場の気持ちの悪い
仕事を熱心に行う管理人がいて、それでいて主人公の頭の中に、
まるで生きているように語りかける死者たちと、その体から
感じる性が、強く、生きるとは何か、生きるために死者を取り扱う
仕事をしている彼らを用いて訴えかけているように思いました。

死んでも生きていても人間であることに関わらず、死体を
ぞんざいに扱うように、汚らしい仕事をしている自分達を
ぞんざいに扱う人達も登場して、主人公たちにとって生きる
ことは何のか、ということを考えさせられます。

また、現在の社会とも重ねあわせると、生きるためにまるで
死んで当然の人の如く酷使される人達のことを思うと、今から
何十年も前に、このような作品を書いた大江はすごいな、
と思いました。
また、それでいて、現在の社会から感じることは当時と全く同じ、
という人間社会の変化の無さも、面白いと言うか、残念というか、
時間が経っても人間が進歩していないということをまざまざと
感じさせられました。

もう一つの名作「飼育」もかなり気味の悪いお話です。
戦時中という舞台で、とある山場の谷間にある村に住んでいる少年と、
村の近くの森に落下した戦闘機の乗組員だった黒人兵が捕虜となり、
少年たち村人が、黒人兵を飼育するように監禁したりするお話です。
もうこれだけでも気味の悪い陰湿な設定だと想像できるかと思いますが、
読んでいるだけで、汚らしい臭いが漂ってくるかのような描写に
読んでいて思わずむっとしてしまいました。
本当に獣臭い作品であって、それでいて少年期の自由奔放な勘違いなど、
心情描写もそれなりに書かれていて、作品の出来はこの短編集の中でも
一番良かったと素直に思いました。ただ、とにかくその物語の流れが
どことなく妙であったり、理解をするのに時間がかかってしまったり
する点が読んでいて難しさを感じました。