「ロッキン・ホース・バレリーナ」(大槻ケンヂ) の読書感想文 書き方の例文 2000字

※2016字

「ロッキン・ホース・バレリーナ」(大槻ケンヂ) の読書感想文

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この作品は、大槻ケンヂ珠玉の青春ロック長編小説です。様々な青春小説があると思いますが、この作品は業界を良く知る大槻ケンヂだからこそ書くことのできた、ロック業界とその現実を知らず夢を見続ける少年たちとのコントラストが、実に優秀な作品だと思います。

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何も知らない少年たちとと、それを利用しようとする大人たち、大人の視点から見れば、それは明らかに後者の方が正しいと感じてしまうことでしょう。しかし、少年たちの夏の熱に浮かされたかのような馬鹿馬鹿しさや、ただひたすらにまっすぐな姿は、心のどこかに激しくボディーブローを打ち込まれたかのような、衝撃を感じます。

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ある意味、この作品のテーマは、青春を過ごした大人たちが、大人として生活をしていくうちに忘れて行ってしまった、幼くともまっすぐで、そしてとことん純粋な正しさを思い出させるということなのだと思いました。 誰しもが生きていく上で、子供らしさや純粋さと言ったものは失わなければならない。そのようなちょっとひねくれた視点が、大槻ケンヂが、恐らく主人公たちと同じ年齢の時に思った大人像なんだと思います。

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そう思うのも、彼がミュージシャンとして作り上げてきた音楽の中には、そのような彼の気持ちに影響されている作品がいくつもあったからです。しかし、彼の、この「ロッキン・ホース・バレリーナ」を描いているあたりの時代の彼の作品は、それとは打って変わって、ちょっとだけまっすぐな歌詞の作品も増えていました。だからこそ、この作品は、その当時の彼の考えと、昔彼が感じたひねくれた大人たちの世界とをうまく混ぜ合わせているのではないか、と私は思います。

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それに、主人公の耕助が置かれている状況も、ロックミュージシャンを夢見ていたという点も、ことごとく、作者自身と重ね合わさっています。そして、彼がまた、バンドブームなどに翻弄されて、大人たちに利用されていたのではないか、と感じていたのではないか、ということも私は想像できました。だからこそ、それらの過去のことを参考にしつつも、自分自身が大人となって、実際の大人たちが一体自分の想像していた通りのものだったのか、という一つの疑問に、この作品は答えているのではないでしょうか。

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もちろん、この作品で描かれている答えは、大人であってもみんながみんな、自分自身が若いころに見てきた汚い大人たちだけではないということ、そして、それを気付かせてくれたのが、他ならぬロックであったこと、それを描いていると思います。 この作品に登場する人物すべてが、バンド、ロックとつくづく音楽によって結びついています。それは、音楽はどのような事情で作られたものであっても、それが与える影響には決して嘘を吐くことができないということを表しているのだと思います。

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ある意味、音楽によって利用されて、辛酸を舐めてきたとしても、音楽はその苦しみをも、その思い出も癒してくれるもので、崇高な存在なのだ、とそう伝えているようにも描いています。 この作品は、キャラクターたちも非常にコミカルで、文章や表現も分かりやすく、その上この言い回しは確かに言えている、というような説得力も持っています。それがかなり面白くて、大槻ケンヂのユーモアや頭の良さをつくづく思い知らされました。

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それでいて、ヒロインと言う立ち位置となる七曲町子は、今で言えばメンヘラと呼ばれる女子になるでしょう。しかし、なぜ少女がそのような行動を取るのか、理解しがたいことを行ってしまうのか、それについての結論も、彼自身の視点による彼の言葉で書き出しており、それは現実にも通じるようなある一つの答えなのだとも思いました。

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大人たちに翻弄されながらも、少年たちはただひたすらにメジャーデビューの夢だけを見つめ続けながら、とことんバンドに、ライブに、音楽に向き合っていく。途中で多くのアクシデントがあって、そのたびに予想しがたい大きなトラブルへと発展していくけれども、それらを自分達だけではなく、耕助たちを支えてくれる、七曲町子を始めとした他の登場人物たちに救われていく。

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そんな人の繋がりを知って行くこともまた、青春を送る上では欠かせないもので、それを怠らなかったからこそ、結末で耕助は、大槻ケンヂが若いころに見ていた汚い大人にならずに済んだのではないか、と思います。途中でこの作品の大人たちの汚さを表すものを力のカードと表現していました。
それがなければ、社会では生き残れないとも言われますが、それを押しのけたのは他ならない、作品では言及されることの無いもう一つの力のカード、人とのつながりを見つけられたからだと思います。

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実際に、作者自身もそれに救われているような点もあるからこそ、このような作品を描けたのではないかな、と思います。途中途中で漫画っぽいシーンも多いのですが、それを差し引いても、しっかりとテーマ性があり、大人ならばそれに心打たれる物語だと思います。