「バケモノの子」(細田守)の読書感想文 書き方の例文 2000字

※2011文字 「バケモノの子」(細田守)の読書感想文

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「おめぇ、オレと一緒に来るか?」
この文章の”おめぇ”とは人間世界に住む蓮(バケモノ世界だと九太)のこと、”オレ”とはバケモノ世界に住む熊徹のことだ。
そんな二つの世界が摩訶不思議に混在する世界が舞台のバケモノの子との出会いは、映画館だった。

[br num=”1″]時をかける少女や、サマーウォーズを手掛けた細田守監督の作品で、ファンタジー色も強く絶対に好きになるだろうと映画公開日に足を運んだ。
結果は言うまでもなく、とんでもなく感動した私はもっとお話を深く知ろうと帰りに本屋へ寄り、平積みされていた文庫本を即手に入れたのだった。

[br num=”1″]今までの細田守監督作品は感動はしても、即日原作小説を手に入れたものはこの作品が初めてだった。それくらい突き動かされる何かがあった。
突き動かされたついでに、その日の夜には文庫本も読破。もう一度劇場で映画を観ようと、座席の予約まで完了させた。
作品の何がこんなにも私に合ったのか、よくわからなかった。
でもとにかく、胸に湧き出す興奮を抑える為に何か行動をしていなければならなかった。

[br num=”1″]「おめぇ、オレと一緒に来るか?」
もしかして”おめぇ”が私のことで、”オレ”はバケモノの子の世界だったのかもしれない。
私は摩訶不思議なバケモノの子の世界に、それこそ蓮と同じように大股で踏み出していった。

[br num=”1″]冒頭のセリフは、一見熊徹の九太へのやさしさに取れる。
最初私もそう思っていた。しかし映画を鑑賞し終え小説も読破した私はそうでないと知っている。
熊徹は九太を助けたいなんて微塵も思っておらず、きっと自分が“弟子”という名の家族が欲しかっただけだ。

[br num=”1″]どこまでも利己的で高慢で自己中心的な考えだと思うが、きっと同時に九太も救われていた。
承認欲求というものが人には存在するが、それはバケモノにも存在するようできっと二人が出会い交わしたこの言葉は、二人を救う言葉となったと思う。
二人はお互い孤独であった。この世界では、人間世界とバケモノ世界が存在する。
そのどこに居ても二人は孤独で、だから最初はそれを少しでも埋めるために”師匠”となり”弟子”となり、修行と称して己の存在意義を見出していた。
師匠と弟子の関係から、いつしか掛け替えのない家族の様な関係となる二人の姿が少し羨ましかった。自分と家族はどうだろうか、熊徹と九太のような関係だろうか、少しだけ不安になった。

[br num=”1″]熊徹は最後大太刀の付喪神となって、九太の胸に宿る。
同じバケモノ世界で育った人間である一郎彦の闇を切り裂く為に。
バケモノ世界も、人間世界も、孤独も、家族も、守る者も全てを受け入れ、全てを守る為に。
最高で最強の剣を胸に宿した九太は、最高に最強だった。

[br num=”1″]私はこのバケモノの子を読んで突き動かされたと言った。
だが実際、自分が変わったかと言われれば変わったとも言えるが、そんなに日常生活が目に見えて変わったかと言われればそうでも無い。
きっと親が死んだ時実感するのかもしれないし、しないかもしれない。なってみないとわからないというのが本心だ。しかし、なって欲しいとも今は毛頭思っていない。
胸に宿る剣。研ぎ澄まされ、恐ろしい程に輝き、人間の持つ闇を切り裂いてくれるもの。

[br num=”1″]熊徹の大太刀には敵わないかもしれないが、自分もいつか持てるだろうか。
自分の胸をトントンと叩けば、立派な大太刀とまではいかないが、短刀くらいなら持っている気がする。
少しだけもやもやしたり、少しだけイライラしたり、そういう“少しだけ”心に宿る闇、実は日常生活で発生する闇のほとんどはこういう小さな闇だと思う。
そんな小さな闇くらいは切り裂いてくれるもの。
それはきっと家族の言葉であり、やさしさであり、激励であり、毎日を過ごす中で育まれていく小さな自分へのエールの結晶体のようなものだ。

[br num=”1″]「そんな日もある、明日からまた頑張ればいい。」「今日はあなたの大好物のからあげなんだから残さず食べてそんなこと忘れちゃいなさい。」「今まで頑張ったんだから、必ず成功する胸張って力を出し切れ。」まっすぐで、キラキラしていて、私の背中を押してくれる家族の言葉は、やさしさは、私を剣士の様に強くしてくれる。
そんなことを思うと、やはり少しは変わった。

[br num=”1″]私自身、こんなにも家族に力を貰って、支えられて生きているとは思っていなかった。
家族は元々好きだったけれど、なぜ好きなのかその一つの理由がわかった。そしてその理由はとても綺麗で、素敵なもので胸を張れるものだった。
私を突き動かしたのは、私自身がこの感情をきちんと理解したかったからなのかもしれない。

[br num=”1″]だから家族が、そして周りの友達が少しでも強くなれるように、たくさんの言葉ややさしさを与えられるような人間になれればいいなと思う。
バケモノに宿らず、か弱い人間にだけ宿る闇がある。
人間はか弱いから宿るのか、私はそうは思わない。
か弱い人間だけに闇が宿るのは、その闇を切り裂く強い剣を胸に宿すことが出来るものもまた、か弱き人間だけだからだ。