「八日目の蝉」(角田光代)読書感想文の書き方の例文1200字

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「八日目の蝉」(角田光代)読書感想文の書き方の例文1200字

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誘拐事件に巻き込まれた子供が保護され、親元に戻ったニュースを見たことがあります。ああ、良かったと、ホッとしたものですが、当人はきっとそれでは終わらないはずです。
[br num=”1″] 角田光代著「八日目の蝉」は子供の誘拐がテーマとなっている作品です。
物語はいきなり前半の主人公の希和子が赤ん坊を誘拐するところから始まります。不倫相手の子供といってもどうして誘拐までするのか最初はついていけずに苛々してしまいました。希和子は赤ん坊に薫という名前をつけ、その子を可愛がり、懸命に世話を焼きます。もともと悪人とは思えず、どうしてこの人がこんなことをという疑問を抱かせます。
[br num=”1″] 後に明らかになるのですが、希和子は不倫相手の子供の堕胎経験があり、相手の不実な態度とさんざん嫌がらせをしてきたその妻に振り回されていた事情があります。薫の両親である彼らは我が子を取り戻すのですが、希和子の裁判の中で夫婦揃って不倫していた実態が明らかになり、世間の厳しい目に曝されます。実の両親は結局、戻ってきた子供に温かい家庭を与えることができず、なんとも皮肉に思えました。夫婦の身勝手さが目立って、誘拐犯の希和子のほうがよほど良い母親だと思えるほどです。この親たちのこじれた関係が薫の人生を普通と違ったものにしてしまいます。
[br num=”1″] 誘拐事件に巻き込まれるほどつらい経験ではありませんが、周囲に違和感を覚えたり、重荷を背負わされているような気になったりしたことは私にもあります。誘拐という破格の重荷を背負わされた薫はどうなってしまうのか、その重荷に潰されはしないか、読んでいてとても胸苦しい気持ちになりました。
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逃亡生活の後半を過ごした小豆島で、薫は自然と友人に囲まれて伸び伸びと育ち、希和子と親子として幸せな日々を送っていました。それは絵に描いたような美しい子供時代です。警察に保護され、連れ戻された薫は本名の恵理菜に戻りますが、両親に腫れ物扱いされ、違和感を覚えながら生きることになります。おそらく恵理菜の実の両親は、誘拐事件がなくとも子供に温かい家庭を用意することができなかったのではないかという気がしてなりません。
[br num=”1″] 恵理菜は、後半成人して登場しますが、しっかり物事を考える女性となっていて好感が持てます。彼女は希和子と同じ過ちを犯し、妻子ある男性の子を身ごもってしまいますが、下した決断は希和子とは大きく異なるものでした。
[br num=”1″] 前半の希和子の気持ちもわからないではないのですが、結局これは恵理菜の物語だと思いました。身勝手な親たちに重荷を背負わされて、それでも生きていく恵理菜の姿には逞しさが感じられます。弱々しく流されがちな希和子に抱いた苛々を、恵理菜が爽やかに昇華してくれるようです。
赤ん坊の頃には無邪気な笑顔で希和子を癒し、自分自身はもがきながらも懸命に生きている姿に心を打たれました。
[br num=”1″] 誘拐に限らず、幼い時につらい経験をして、重荷を背負ってしまった人に希望を与えてくれる話だと思います。また、私自身、逞しく生きなければと活を入れられた気がしました。