あしながおじさん(ジーン・ウェブスター)の読書感想文 書き方の例文 2000字

2,146文字 あしながおじさん(ジーン・ウェブスター)の感想文

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「あしながおじさん」。
最初にこの題名を読んで首をかしげる人は多いだろう。
題名だけを見ても、この物語の主人公がどんな人物なのか想像もつかないに違いない。
私は本を読む前はおじさんが主人公なのかと思っていたが、読み始めていくうちに
全く違う人物である事が分かった。

[br num=”1″] その物語は孤児院の憂鬱な水曜日から始まっている。
その孤児院はとても貧しい。
主人公のジルーシャ・アボットは十七歳で孤児院の中では最も年上なので、
自分より年が下の子供たちの世話やリペット院長から言いつけられた用事を
次々にこなさなければならない。
その水曜日が何故憂鬱なのかと言うと、毎月一度孤児院を視察に来る視察委員や
評議員達のために食事の準備や子供達の身なりを正したりするので、
特に大変な日だからである。
私はここまで読んで暗澹とした気持ちになった。

[br num=”1″] ジルーシャ・アボットのような若い娘が、この孤児院で単調で灰色の毎日を
送っているのが不憫でならなかったのだ。
ところがこの気分は長く続かなかった。
ジルーシャは評議員の一人であるジョン・スミス氏に気に入られ、
彼の援助で大学に行ける事になったからである。
それまでは彼の援助で孤児院の少年を大学に行かせていたが、今回はジルーシャの
将来の身の振り方について定例議会で取り上げられ、学校で国語の成績が優秀だ
という事と「憂鬱な水曜日」について書いた作文が決定打になり彼女を大学に
進学させる事になった。

[br num=”1″] ジョン・スミス氏は彼女の文才を見込んで作家にしたいと思っているが、
大学の四年分の学費と月々のお小遣いを与える代わりに、毎月一度学校生活に
ついて手紙で報告するのを絶対的な条件としている。
私は彼女がこれまでの生活から抜け出し、幸福への第一歩を踏み出す事になったのを
とても嬉しいと思った。
ジルーシャ改めジュディ・アボットは、ジョン・スミス氏に毎月一回手紙を書く
事になった。

[br num=”1″] 「あしながおじさん」というのはジュディがジョン・スミス氏が定例会議からの
帰り際、孤児院の壁に映った影が足長トンボのように見える事から彼女が名付けた
愛称だが、本名で呼ぶよりユーモアがあって面白い。
自分の事もジルーシャではなくジュディ・アボットに改める所は、彼女の愛すべき
点だ。これは彼女が顔を見た事がないあしながおじさんに少しでも家族らしい
気持ちを持ってほしい表れなのではないだろうか。
大学の学費の他にこれまで持った事がないお小遣いまで与えてくれる人に対して、
身内らしい感情が芽生えるのは自然だと思う。

[br num=”1″] 大学でどのような勉強をしているのか、寮生活はどうなのか、逐一報告するように
言いつけるのは、自分への愛情から提案された事だと信じたい気持ちもあるのだろう。
この物語はほとんどジュディ・アボットの手紙だが、ジュリア・ペンデルトンや
サリー・マクブライドの二人のルームメイトを始めとした友達との交流や、
ユーモアを交えたエピソードの数々がとても面白いので、自分も大学生になった気分
で読む事が出来る。
ジュディに共感出来るのは、彼女の手紙に対して「あしながおじさん」からは一度も
返事が来た事がないのが寂しいという事だ。
時々彼女の手紙にあしながおじさんについてどんな人物なのか質問したり、彼について
自分が想像した事を書いてあるのを読むとほろりとしてしまう。

[br num=”1″] ジュディ自身は全く気が付かないあしながおじさんの正体は読んでいくうちにすぐに
分かるが、分かっているから特にもどかしく感じる。
彼女が恋慕うあしながおじさんは自分の正体を隠して度々物語に登場し、彼女と交流の
場を持っているからだ。
あしながおじさんだけでなく彼女を好きになる若い男性も登場するので、
その点は安心である。
私が彼女の手紙の中に書かれていたエピソードの中で一番好きなのは、ジュディが
扁桃腺で入院している時にあしながおじさんがピンクのばらの蕾の花束に自筆の
サインが入ったカードを添えて贈ってくれたエピソードだ。
私は花束を買って帰る時は出来るだけ蕾が多い花を選ぶようにしている。
満開の花は見た目はきれいだが、家に持って帰ってもすぐに枯れてしまうからだ。
その点、蕾は若くてこれから花が咲く事を予感させるし、咲くまでのプロセスや咲いて
からの姿を楽しめる。病人にとっては良い慰めになると思う。

[br num=”1″] ジュディにとっては自分が病気で入院している事を手紙で知らせたらすぐに花束を
贈ってくれた事も嬉しいが、今まで知らなかったあしながおじさんの直筆のカードが
届いた事も大きな喜びになっただろう。
事実、このエピソードがあった後は彼女があしながおじさんについて決定的な質問を
する手紙はなくなったのである。
本当に困った時はあしながおじさんがすぐに助けてくれるし、彼女に対して義務だけ
を負っているのではなく、身内の愛情を返してくれるという確信を持ったからだ。

[br num=”1″] ジュディは四年間の間、勉学に励んだり若い友達や他の大学の男性達との
社交生活や農場生活を楽しんだりして、濃密な時を過ごしたが、あしながおじさん
への手紙を欠かす事はなかった。
最後は生涯で初めて書いたラブレターで終わったが、どの手紙も暖かい光を放つ
真珠のようだった。
一日分の手紙を読むごとに真珠が一粒増えていき、最後の一粒を繋げると輝く
首飾りになる。
宝箱に入れて大切にしたい作品である。