「うるうのもり」(小林賢太郎)の読書感想文 書き方の例文 2000字

「うるうのもり」(小林賢太郎)の読書感想文
※1985文字

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「あの森に行ってはいけません。うるうというおばけがでますから。
高い高い木の上で、うるううるうとないているおばけがでますから」

10歳の「僕」が出会ったのはおばけのうるうでした。
転校して間もない主人公は家の近所にある森に興味を示します。
昼でも夜のように真っ暗な森の中で、不思議な体験をするのです。
最初に見つけた不思議から冒険心をくすぐられ、森の奥へと進んで
行くと木の根っこにひっかかり、誰かが掘った落とし穴に落ちて
しまいました。

 

そこから主人公を助けてくれたのがうるうで、落とし穴を掘った
のもうるうでした。
うるうはこの森に住む人間で、おばけの正体や主人公が見て来た
不思議の秘密を教えてくれます。
もう来るんじゃないぞ、と帰されてもこんなに魅力的な森がある
のに来ない訳がありません。
主人公は毎日うるうに会うため家族にも友達にも内緒で森に通い
ました。
ここまで読んで、私は主人公がとても羨ましくなりました。
私の家の周りに森はありません。
ただでさえ非日常的な空間に思えるのに、うるうという存在が
加わることで森は夢のような場所なのではないかと感じさせ
られます。

 

うるうが作った今までにない植物や森の中の本棚、うるうが描いた
沢山の人の絵。どれもが珍しくておかしい、そしてちょっと悲しい
ものたちです。
うるうは自分を「余り1」の人間だと言います。
2月29日のうるう年生まれで、いつも余ってしまう自分は世界で
たった一人の余った人間だと称すのです。
主人公も2月29日生まれで、うるうに親近感を抱きます。
うるうと友達になりたい主人公と、友達はいらないとつっぱねるうるう。
歳の離れた二人ですが、喜んだり怒ったり呆れたりしている姿を見て
いると彼らは既に友人同士になっているのでは?と思うくらいです。
こんな素敵な友達がいるなんて良いなと二人の関係に憧れました。
だけどその秘密の関係にも終わりが来ます。

 

主人公が森に行っている姿をクラスメートが見ていたのです。
森には楽しいものがあるに違いない!とクラスの皆で森に行くことに
なってしまいました。
うるうのことは内緒にしなければいけないため、慌ててうるうに
このことを伝えます。
うるうは驚き、主人公と知恵を合わせてクラスメートたちを森に
来させないように策を練り「うるうのおばけ」になって皆を森から
帰すのでした。
二人で秘密を守った瞬間、うるうと主人公は手を取り合って喜びます。
うるうからしてみたら生活を守るための苦肉の策だったかも知れませんが、
私はこのシーンが子供のいたずらが成功して喜んでいるようにも見えました。
友達とあれこれ考えた作戦が上手く行ったのなら、嬉しくない訳がありません。
この二人は正真正銘の友達になれたんだろうな、と思った矢先に主人公は
うるうの本当の秘密を知らされます。

 

うるうは4年に1歳しか歳を取らない人間でした。
家族も友達も好きな人も、皆うるうを残していなくなってしまいます。
だからうるうは人里を離れて一人で森の中で暮らしていました。
歳の重ね方が異なるせいで何十年以上もの孤独を抱え、世界の中の余り1に
なることを受け入れたうるうの気持ちを思うと、友達はいらないという態度
も納得してしまいました。
それと同時に主人公が遊びに来ることに喜びも感じていたのだろうと感じ、
切なくなりました。

 

10歳の主人公と40歳のうるう。
親子ほどの歳の差の友情もあるだろうと思いながら読んでいましたが、
160年前に生まれたうるうはとても大きな差を常に感じていたのでしょう。
うるうは更に森の奥深くに移ることを決心し、主人公にもう来るなと言います。
主人公も素直に従い、それ以降はうるうに会いに行くことはありませんでした。
このまま二人は思い出になって行くのだろうかと寂しい気持ちでページを進め
て行くと、主人公は歳を重ねていました。
うるうと出会ってから40年。
主人公は40年分の歳を取り、うるうは10年分の歳を取りました。
二人は同い年になったのです。ここに来て、私は鳥肌が立ちました。
年齢というものは差が縮まることはなく、平行線で進むものですがこの二人
に関しては違います。
この二人の友人はここで肩を並べることが出来たのだ、
と分かった途端に寂しさが薄れました。

 

50歳になった主人公は再びうるうの森に訪れます。
40年前とは姿が変わりつつありましたが、まだ森は残っていました。
そこで主人公はうるうとした約束を果たすのでした。
主人公とうるうが過ごした時間は彼らの生きている時間のほんの数週間の
出来事でしょう。
しかし二人の関係は濃く、お互いがお互いを忘れることなく年月を重ねる
ことが出来たのだと思うととても嬉しくなりました。
主人公との思い出があることでうるうは少なくとも40年の間は寂しく
なかっただろうと思うと彼らの出会いは本当に素敵なものだったんだなと
思い、少し切なくも温かく感じたお話でした。

 


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