「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」(汐見夏衛)の読書感想文 書き方の例文 2000字

「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」(汐見夏衛)の読書感想文
※1992文字

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「愛する人たちを守るために、僕は死にに往くよ」と若干二十歳の若者は言う。焦げるような暑さの中、彰は百合に言う。72年前のあの夏のことです。

私は今まで、第二次世界大戦時を背景とする小説を手に取ったことがありませんでした。しかし祖母の戦争体験を聞き、この時代を小説から考えることも意味のある事なのではないかと感じ、この本を読み始めました。

主人公の百合は現代に生きる中学二年生。反抗期真っ盛りの百合はある日、女手一つで育てた母親とけんかをし、地元では近寄ってはいけないと言われている防空壕の跡地で夜を過ごそうと考えました。そこで眠ってしまった百合が目を覚ましたのは1945年のあの夏の日だったのです。

 

百合はタイムスリップしてしまったのでした。灼熱の中、木造の町を歩く百合はやがて疲れて倒れこんでしまいます。そこに現れたのが軍服を着た青年、彰でした。彰は水筒を取り出すと百合に与え、懇意にしている食堂に連れて行ってあげます。そこで百合は店を商うツルさんに一人であること、行く場所がないことを告げると、ここに泊まり込んで店を手伝ってくれないかと提案され、住み込みで働くことになりました。ツルさんは空襲で家族を失っていたのです。

そこの店は特攻隊に志願した人たちが頻繁に利用しており、食料を含め、あらゆる物資がなくなりつつあった時代においてツルさんは必死に、特攻をしていく人に料理を提供しているのでした。そんな中で、百合は彰に惹かれていきます。百合は彰に何としても特攻志願を取り下げてほしい、戦争なんて馬鹿げている。若者の命を捨てることを良しとする国に、どんな未来があるのかと彰たちに訴えます。しかし彰は、自分が何もしないで人がただ亡くなっていくのに耐えられないのだ。少しでも敵に報えることができるなら、戦後交渉を少しでも有利に運ぶためにも特攻をしなければならないと百合の訴えを受け入れません。そうして彰は夏の空に飛びたっていくのでした。

 

72年前のあの夏ほど人の命があまりに軽かったことはあっただろうか。

このように自問せずにはいられない小説でした。九死一生の作戦というのは、世界各国昔から戦争で取られてきた戦法なのかもしれないですが、特別攻撃隊は死んで初めて作戦として成功というあまりに無謀で、命を軽視された作戦だったのだと感じました。

終戦記念日が迫ると、テレビや新聞などでも、特攻に関して取り上げその悲惨さを伝えていますが、今回の小説では特攻を志願した人の様々な背景をも描写されており、なお一層その悲惨さを掻き立てるものでした。特攻は日本がこの戦争に勝利する唯一の手段だと信じて疑わない人。特攻志願者を募るときに、志願しないという勇気が持てずに志願してしまい特攻の命令が下るのを死刑宣告がなされるかのように怯えているもの。

そして大切な人がいるからこそ特攻という戦法に日本の未来を託そうと考える彰。読者である私は、もちろん先の大戦の結果を知っているからこそ未来を絶たれる私とさほど変わらない年齢の人々に涙を禁じえなかったです。
更に空襲の場面では、赤子をおぶったまま焼け焦げ、死んでいる人、爆風で家の壁に張り付いたまま亡くなった人などの描写が、私の祖母に聞いた話しとも重なり、戦争の悲惨さを際立たせていました。

また百合が、飢えのために死にそうな少年に出会った場面では、街中でこんな戦争は馬鹿げている。

日本は負けると言い、それを聞いた警察に殴られるというシーンでは、私が祖母から聞いた、小高い山に登り景色を友達と見ていた時に、特高警察から「お前はスパイか」と怒鳴られたことがあったという話とも重なり、自由にものを言えない、故に疑心暗鬼にもなるという当時の空気を想像させるものでした。

 

最後に特攻の出撃命令が下り、飛行機で飛び立つ彰を見送る百合の気持ちたるや想像を絶するものだったのだろうと感じるのと同時に、特高を行う人は家族に会う間もなく、残された家族は、特高を行ったという事実を聞かされて、その死を知るという無情さにやり場のない怒りを感じました。

出撃を見送った百合はその場で意識を失い、現代に戻ってきます。そこで改めて命の大切さ、家族の大切さに気付き、母親との関係も変わり始め、学校での態度も変わっていきます。百合と同じように、この小説を読んだ私も、今ある平和の尊さや命の重さを改めて感じ、周りの人、家族に感謝の気持ちをもって過ごしたいという気持ちを持ちました。

また今なお、世界中で紛争や戦争が起きており、そこで犠牲になっているのは一般の市井の人であると思うと、いつの時代も戦争を始めるのは国や力を持った人で、その犠牲になるのは何の力もない人だと感じました。だからこそ時代に目を背けることなく、小説を通して戦争という道に進むことがどういうことなのかを一人ひとりが考え、平和を希求することが大切であると感じました。

 

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