「アンソニー はまなす写真館の物語」(茂市久美子)の読書感想文 書き方の例文 2000字

 

読書感想文
アンソニー はまなす写真館の物語(茂市久美子)
※2047文字※

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私は茂市久美子の作品が好きで、数多くの作品を読んでいます。

今回私が手に取った「アンソニーはまなす写真館の物語」は、以前から気になっていましたが、なかなか読む機会がありませんでした。

茂市久美子の作品に共通する点は、読むほどに自分がまるでそのお話の中に溶け込み、本を読んでいるというより、すぐそばでお話の中で起きていることを見ている気分になれるところです。

ですが、「アンソニーはまなす写真館の物語」をなかなか手に取れなかったのは、いつもの作品と異なる気がしたからです。それは読んでいるうちにそのように感じた理由が、解ってきました。

「アンソニーはまなす写真館の物語」は、主人公龍平の高祖父から続いた写真館の物語です。

アンソニーは歴代の写真館の主人と共に働いてきた、古い蛇腹式の写真機の名前です。

いわばアンソニーは、はまなす写真館の象徴であり、写真館のことを全て知っているのです。

そのアンソニーが突然主人公の龍平に話しかけるのです。

古い蛇腹式の写真機がしゃべるのには、主人公の龍平だけでなく、私も驚きました。

主人公の龍平が写真の勉強を終え、プロのカメラマンになろうとしていた時に、龍平の父親が急死してしまい、はまなす写真館を継ぐことになります。

プロのカメラマンになる夢をなくしてしまったと思って、写真館に戻っても、あまりいい気分ではありませんでした。

そんな時にアンソニーが龍平に話しかけたのです。

アンソニーは五代目にあたる龍平に、この写真館を守って欲しかったのでしょう。

いやいや継いだ写真館でしたが、龍平は様々なお客さんの事情や、はまなす写真館の先代たちの写真家としての姿勢や、先代たちに写真を撮ってもらったお客さんの話を聞き、様々な体験をすることで、龍平自身の心も変化していきます。

本人もその変化に気づく頃には、すっかりはまなす写真館の主人になっていったのです。

もう写真館の仕事がいやではなく、先代の撮った写真までも愛おしく感じるようになるのです。

はなます写真館に戻った頃は、写真館のカメラマンはもちろんプロのカメラマンですが、龍平のイメージするプロのカメラマンではなかったのでしょう。

それが仕事をするうちに、写真館の主人もプロのカメラマンだと思えるようになったのでしょう。

その折々にアンソニーと龍平の会話が違和感なく心地いいのです。

この本で私の好きな部分はザシキワラシのお話です。

龍平に写真撮影を依頼するおばあさんが、おばあさんの横にもう一枚座布団を敷いて、写真を撮って欲しいと言います。

 

写真を撮ろうとするとその座布団に上に、ちょこんとザシキワラシが座って、おばあさんと写真に写っていました。

その子ははまなす写真館初代嘉平が撮った写真にも写っていました。

おばあさんが元気なのは、そのザシキワラシのおかげとか。

来年のおばあさんの誕生日もまた写真を撮ってあげたいと思う龍平。

その時にはケーキを買って行ってあげようと思う龍平の気持ちが、これからもはまなす写真館で頑張ろうと、自らの意思で頑張ろうという龍平の素晴らしい成長がみられた瞬間で、大好きです。

茂市久美子の作品は、とても優しい気持ちになれます。

一生懸命生きている人が描かれています。

そして動物や写真機まで、人と話せるものたちが登場します。

 

実際の私たちの生活では聞けないものですが、動物や写真機の声は生きているものの声であり、そのものたちが話したら、きっとこう言うのだろうと頷けるのです。

はまなす写真館にかかわるお客さんは、人間ばかりではありません。

そこが読んでいて優しい気持ちになれる理由かもしれません。生き物は人間だけではありません。

人も動物も共に生きているのだと、茂市久美子は教えてくれていると思います。

主人公龍平を支えるアンソニーは古い写真機ですが、龍平の跡継ぎまでもが使える写真機として残して、龍平の子供や孫に、龍平のこと、先代のことを話してくれる存在であり続けて欲しいと思いました。

私の周りにもアンソニーのようなものがあったら楽しいのになあと思いました。

「アンソニーはまなす写真館の物語」は、大人が読んでも心にしみわたる作品だと思います。

たとえ自分の思い描く夢が遠ざかりそうになっても、夢に辿り着く道は幾つもあり、努力し諦めなければ、自分の納得いく生き方ができると龍平を通して学びました。

主人公龍平が老舗の写真館を継ぐことで、社会人としての心の成長を表し、どんな状況に置かれても、自分が目指すものがあれば、自分の方法で願いを叶えることはできると教えている作品なので、読み手もそのことをしっかり受け止められなくてはならないと思いました。

それがこの本をなかなか手に取れなかった理由につながる気がしました。

オーラみたいなものでしょうか。

しかし読んでみると、読んでよかったと実感しました。

何度も繰り返し読みたい一冊となりました。

 

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