「最後の一葉」(オー・ヘンリー)の読書感想文 書き方の例文 2000字

「最後の一葉」(オー・ヘンリー)の読書感想文
※2029文字

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「はっぱ。蔦のつるの。最期のが落ちると、あたしもいかなくっちゃならないの。三日前からわかってたの。お医者さん、そういったでしょう?」
 自分の死期を壁に残った葉っぱに重ねてメランコリックに耽る少女のお話しは、短編小説を読む前から知っていました。いつ、どこで聴いたのかは覚えていませんが、優しくも悲しい気持ちで胸がいっぱいになったのは覚えています。

 「あの最後の一枚が落ちたらわたしも死ぬの」とつぶやく可憐な女の子と、その子のため強い雨の夜に壁に葉っぱの絵を描いて肺炎で亡くなる老人とのやり取りを描いた童話というイメージでした。が、今回読んだ飯島淳秀 訳の短編小説「最後の一葉」は、そんな私のイメージをすっかり塗り替えてしまいました。

 主人公であるジョンシーは「最後の葉っぱが落ちたら死ぬ」とベッドの上で諦観したり怯えているというよりも、そう言って周囲の気を惹こうとしているように思えました。もしくは自分の死をドラマティックに盛り上げ、親友であるスウの心にしっかりと残ろうとしているような印象です。その思った大きな理由が、彼女の年齢です。彼女は年端のいかない女の子ではありませんでした。

 少なくとも、一人でワシントンスクエアにやってきて、スウという絵描き仲間を見つけて、二人で煉瓦造りの三階建てのてっぺんに共同のアトリエを作ることができるくらいの年齢です。すっかり独り立ちしています。

 ちなみにスウのことは、今まで主人公のお母さんだと思っていました。
 そして優しい絵描きの老人だと思っていたペアマン老人は、近所に住んでいそうな偏屈爺さんだったのです。作中で「芸術の敗残者」という気取った紹介をしてもらっていますが、登場した時点では「数年前から広告用のなぐり描きを描く以外には絵の仕事はなにもしていない」ような有様です。収入は、本職を雇うことのできない若手絵描きのモデルをして稼いでいます。

 他にも医者や世捨て人など登場しますが、メインキャラクターはこの三人。とても人間味のある三人です。感情的で我が儘で、でも情熱的で思いやりの気持ちに満ちています。

 同じアパートに住んでいる絵描き同士、固い絆に結ばれています。
 たとえば先程、偏屈爺さんと印象を述べたベアマン老人ですが、彼がジョンシーのことスウから聞いたときにわめいた台詞「ここはヨンシーさんみてえないいひとが病気でねるところじゃねえぞ。わしゃいつか傑作を描く。そしたら、みんなして、こんなとこ出るだ。ふんとだとも! そうだとも」には、グッとくるものがありました。

 親友のジョンシーのために、涙でナプキンがぐしょぐしょになるまで泣き、その後ジャズを口笛でふきながらジョンシーの部屋に威勢良く入っていたスウの気丈で優しい気遣いにも胸をうつものがありました。
 なにより主人公ジョンシーの最後の長台詞。それまであまり喋らなかった彼女が、スウを抱きしめて「ねえ、あなた、ちょっとお話ししたいことがあるの」と前置きをしてから、半ページにわたってベアマン老人が肺炎で死んだこと、壁の蔓の絵のこと、彼の部屋に雨に濡れた服や靴と緑と黄色をまぜたパレットが置いてあったことなどを、淡々と語るシーンでは思わず涙がこぼれそうになりました。これが、もし優しい童話に登場する優しいお姫様のような存在だったなら、わっと泣いていたかもしれません。そして物語の主人公が泣くことで、読者である私は泣けなかったと思うのです。
 ともあれ、そんな風にして、私が勝手にイメージしていた砂糖菓子のような「最後の一葉」のキャラクター像は、この個性と厚みを持った登場人物達によって霧散してしまったのです。
 霧散した後に残ったのは、確かに生きていると思わせる登場人物たちが織りなす泥臭くも美しい物語でした。
 では、私が勝手に想像したキャラクターではなく、もしも私が彼らの立場ならどうだったでしょうか。
 スウの立場なら、彼女のように大切な親友のためにあんなに泣いたり怒ったり、かいがいしく世話をできるとは思えません。

 ベアマンのように、大切な誰かのために身をなげうつようなまねができるとは思えません。
 というよりも、それほどに誰かを大切に思える自信がありません。そういう意味において、私はこの二人がとてもうらやましいのだと思います。
 そしてジョンシーの立場なら、きっと自分のために大切な誰かが死んだことを認められず「あれが、ベアマンさんの傑作なのよ」という彼女のラストシーンでの言葉を言えないでしょう。

 さて、最後になりますが、この作品のなかでもっとも印象深く心に残っている台詞があります。
 主人公の「ミルクに葡萄酒を少し入れて下さらない」という一言。壁の葉っぱが落ちていくときの「もう葡萄酒はいらなくてよ。また一枚、落ちた。スープ、いらないわ」対になる、嵐の後に残っていた最後の葉を見たときの台詞です。 

 

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