「西の魔女が死んだ」(梨木 香歩)の読書感想文 書き方の例文 2000字

 

読書感想文
「西の魔女が死んだ」(梨木 香歩)
※1991文字※

 

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迫害と孤立は、小説、とりわけ児童文学ではよく取り上げられるテーマの一つだと思う。

この「西の魔女が死んだ」も、そういうテーマを含んだ小説(児童文学)である。

主人公の「まい」は、イギリス人と日本人のクォーターである。

私は、ハーフもクォーターも、今のところ出会ったことはない。

あくまでフィクション作品の中か、テレビの中で見たことがある程度だ。

だからまいを取り巻く環境も、おそらく同じようなものだったに違いない。

つまり、ある人は奇異と好奇の目で見ただろうし、ある人は「自分たちとは違う」と差別的な感情を持っただろうし、またある人はある種の憧れなり羨望なりを抱いただろう。

中学生だから、猶更だ。

そういう感情はある程度素直に、剥き出しにされる。

多感な時期である。

そしてまいは、そういうものをわずらわしく感じたのだろう。

だから自ら、周囲との交流を絶っていく。

それで余計、周りからは遠ざけられ、あるいは嫌われすらしたわけである。

「他とは違う」ということは、それだけ中学生にとっては負担なのだ。

まいはそれを、クォーターは先天的な要素だから仕方ないにもかかわらず、生まれた瞬間からずっと背負い続けている。

周りとの関わりを絶とうとするのも無理はない、と私は感じた。

結果、彼女は不登校になり、そこで療養のつもりで魔女=イギリス人の祖母の家にお世話になる。

魔女と言っても、ファンタジーに登場するような典型的な魔女ではない。

ごくごく普通の人間である。ちょっとした特殊能力みたいなものは持っているにせよ、そう言って差し支えないだろう。

しかしそれでも、「魔女」はその力によって迫害された、と思われる場面があった。

私はここで中世ヨーロッパの「魔女狩り」を想起した。

魔女というレッテルを貼り、「他とは違う」というそのことで、一体どれだけの人間が犠牲になったのだろう。

それはまいのクラスでの孤立にも繋がる。

迫害と孤立。

それはいつの時代も、どの場所でも(それこそいじめだってそうだし、人種差別もそうだ。過去の日本には「えた・ひにん」という言葉だってある)、人間という生き物が存在する限り、起こりうることなのだろう。

そう思うと哀しくなったし、行き場のない怒りも感じた。

しかし、「迫害」され「孤立」したまいは、その逃避先としての祖母の家で、少しずつではあるにせよ自分らしさを取り戻していく。

彼女は自ら「魔女になるために」祖母の家で修業(もちろんこれもファンタジックな意味での修行ではない、家事や料理をするといった程度のことだ)に励んでいく。

そのタフさに、私は感動した。同調も迎合もせず、自分らしさを貫いていくというその姿勢、あるいは強さは、「迫害されたからこそ」培ったのかもしれない。

確かにそう考えると、ガンジーやキング牧師など、迫害された人々には曰く言い難い、信念に基づくぶれない強さがあった。

そこで私はふと、「孤立」とはなんだろうと考えた。

孤立することは、確かに恐ろしいことだ。

しかしそれで自分自身を否定する必要はあるのだろうか。

孤立した上で、強く生きるというのは可能なのかもしれない。

まいにも、まいの祖母にも、そういう強さを感じることはできた。

所詮フィクションだ、と言ってはそれまでだ。

しかし、実在の人物で、「迫害と孤立」の経験をバネに努力し、やがては人に評価されたような人間はそれこそ数えきれないほどいるだろう。

「偉人」と呼ばれる人の多くはそうだろうし、芸能人や作家、スポーツ選手など、現代にもそういう人はたくさんいるはずだ。

タイトルの「西の魔女が死んだ」が果たしてなにを意味するのか、ここまでくればある程度予測はできるだろう。

この小説のテーマには、「死」も含まれている。そしてここに関連して、「過去の約束」が重要な意味を持っている。

それはまいと祖母の交わした、優しくも切ない約束だ。

死の哀しさは、生の、そして命の尊さを際立たせる。

中学生のまいにとっては、厳しい経験だったと思う。

それでも、彼女は少なくとも、前に進むことのできる糧を獲得したようには思う。

この小説は、ストーリーだけを追えば、決して手放しにポジティブとは言えない。

哀しみと苦しみ、後悔に彩られている。しかし不思議と、読後感はどこか爽快で、今をしっかりと生きよう、そして自分なりに前に進んでいこうという活力をくれる。

それはあるいは「西の魔女」の魔法なのかもしれない。

まいは決して、自分らしさを曲げようとはしないだろう。

それはあるいは、新たな場所での再びの「孤立」を招くかもしれない。

しかし私は、それでもまいは、強く生きていくように思う。

そしてその強さを魅力に感じる人間は、必ず現れる。

私がそうだし、この本の読者がそうだろう。

「孤立」の裏側には、同じような葛藤や苦しみを抱えた人々との「繋がり」があると、わたしはこの小説を読んで強く感じた。

 

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