読書感想文
「ハッピーバースデイ」(青木 和雄)
※1997文字※
私がこの本と出会ったのは小学6年生の頃でした。
図書室に新しい本が入ったと聞き、先に友達が読んでいたのと、「ハッピーバースデー」というタイトルに幸せなストーリーを想像し借りてみました。
ところが、ページを開くとそこには自分の知らない世界が広がり、想像もつかなかったような結末が私を待っていました。
主人公のアスカは小学5年生。
控えめで決して目立つ存在ではなかったものの礼儀正しい女の子でした。
家族は、単身赴任で不在の父と通訳の仕事で忙しく働いている母、そして両親の期待を背負いかわいがられている中学生の兄です。
両親は兄にだけ将来を期待し、アスカには目を向けようとしません。
この家族の問題がきっかけでアスカは心を病み、声をなくしてしまいます。
担任の先生と兄の力で母の実家である田舎で祖父母とともに生活し、静養することになります。
そこでアスカが出会った物は…?
祖父母の愛情をたっぷり受け、強く優しくたくましく成長したアスカ。
静養中に引っ越した自宅から近い学校に転校するも、アスカのクラスではある一人の少女に対するいじめが日常的に行われていました 。
アスカは数ヶ月前の自分の姿といじめられている少女の姿が重なり見ていられなくなり、祖父母からもらった勇気で誰もが見て見ぬふりをするいじめに立ち向かおうとします。
また、学校からほど近いところにある養護学校でも一人の少女と友達になります。
少女は重い病をいくつも抱えていながら、アスカという初めての友達に一生懸命生きて優しさをくれた存在でした。
突如訪れた大好きな祖父と養護学校の少女との別れ。
壊れそうになるアスカの心。その後アスカはどうなるか?
問題を抱えるのはアスカだけではありません。
親の期待に本当に自分の将来はそれでいいのかと悩む兄。
兄もアスカのように強くたくましく自分の道を選ぶことができるのか。
そして、アスカを嫌い、無視し続けてきた母も。
いったいその原因は?
その結末は??
アスカは最後にとてもすてきなプレゼントをもらいます。
さて、それはいったいなんでしょう??
私はこの本を読み終わったとき、アスカが祖父母からもらった心のエネルギーと同じくらいの物を自分ももらったような気がしました。
「怒るときは怒れ、泣きたいときは泣け、それが人間としての豊かさだ」
アスカの祖父はこう言いました。
コミュニケーション不足の昨今、本来の感情を出して良い場所などほとんどないように思えますが、せめて自分の心の中の感情まで殺してしまうことだけは避けたい物です。
誰かを守るため、自分が傷つかないため、状況は違っても一言はっきり言わなければいけない場もありますが、なかなか言えないのが現状です。
自分の心の中だけでも素直でいたいものです。
また、アスカの祖父は「恵み」という言葉をよく使いました。
土の恵み、植物の恵み、太陽の恵み…。
それら一つ一つの恩恵を受け私たち人間はこうして幸せに暮らしていけるのだと改めて気づかされました。
家族の形、友達の形、いじめ問題、命の大切さ、自分自身の成長、この本にはそれらの大切なことがたくさん詰まっています。
実は、私自身この本に出会う数ヶ月前まで、担任の先生から受けていた精神的苦痛に耐えきれず、小児精神科の病棟に入院していた経験があります。
先生から自分の存在を否定され、何をやってもだめだと非難され、そのうち自分は何をやってもだめな存在なんだと思い込むようになり、ついには辛くなって食事も喉を通らなくなりました。
数ヶ月の西洋期間と、両親と学校の話し合いにより私の問題はやっと一つの教室内で起きていることから学校内での問題として取り上げられるようになり、少しずつ学校にも行けるようになってきました。
その頃に出会ったのがこの本です。
まだ、周囲の先生の目が気になったり、休んでいた期間離れてしまった友達に近づきにくくて緊張して積極的になれなかった私に、この本は一つ一つ私が私らしくいる方法をごく自然に教えてくれました。
また、アスカが田舎の祖父母の家で体験したはたけでの野菜や果物、草花とのふれあいの部分では、当時すんでいた自宅にも畑や田んぼなど良い環境がありながら見る機会がなかったなと思い、自然とふれあう大切さも教えられました。
自分が心を病んでいた時期を乗り越え、この本に出会い、今度は私が誰かの支えになりたい、自分自身ももっと強くなって気持ちにより添ってあげられるような、強くなるお手伝いができるような人になりたいと強く思いました。
現在私は30才を過ぎ、専業主婦として家事育児に奮闘中で、人を支えるような仕事はできていませんが、この本に出会い自分の考え方が変わり、それが今の人生につながっていると強く感じています。
元気がないとき、何かに迷うとき、強くなりたいとき、背中を押してほしいときなど今でも何度も何度も読み返します。
皆さんにもぜひおすすめしたい1冊です。
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